土曜日

二条駅近くで待ち合わせをして

階段を使って地下に降りると、地味な喫茶店があった。

「僕はここの常連でね。ここは穴場さ。シャノアールとちがって落ち着く」

ワントーン照明の落ちた、オレンジ色の照明の下で、どっしりとしたソファーに座る。

「改めまして、はじめまして、霧島です」

そう言って目の前の男から差し出された名刺を受け取る。

俺は名刺なんて持ってないのでただ黒沢です、と名乗った。

「黒沢君、か。よろしく」

名刺には、霧島悠太と書かれていて

サイエンス社 アトランタ編集部第一G

と社名と部署が書かれていた。

茶色の髪、カラーサングラスから覗く大きな瞳は、逆光のせいか、色素が薄く見えた。

左目の下には泣きぼくろ、白い肌と高い鼻は、まるで外人のようだ。

彼が、あの記事を書いた、霧島悠太だった。

「それで、さっそくだけど死の待ち受けの話をしよう。黒沢君、君に表示されてるのかな?」

霧島悠太は言って煙草を取り出す。

いい?と彼は一応断わりを入れてから、火を付けた。

「その前に、守秘義務が守られること確認させて下さい」

「あぁ、安心して、情報提供者や一般個人の名前を勝手に公表したりはしないよ」

ふ、と紫煙を吐き出すと、霧島悠太は俺をサングラス越しに見た。

「もう1つ、俺から確認事項があります。あなたはタナトスの館という、ケータイサイトを知っていますか?」

「あぁ、知ってるよ」

「管理人はあなたですか?」

「なぜそう思った?」