古典の担当の江古田は、敦子にとっては天敵だった。

大きく肩を落とし、メールする。

『分かった。その代わり、今日の夕飯、芙美叔母さんに頼んでおいて』

ピ、とメールを打ち終えるとスグ返事が来た。

『(●´∀`●)イエッサー
 愛してるぜベイベー』

……

こいつには、古典の前に日本語を教え込まないとな。


敦子の家に行くと、芙美叔母さんが俺を迎えてくれた。

挨拶もそこそこに敦子の部屋に上がり、干物になっている敦子をたたき起こす。

プリントを片付けて、補習の合間に夕飯を食べているとケータイが鳴った。


「あ、電話だよ?」

敦子がオムライスを食べながらスプーンで俺をさす。

今日は随分電話来るな。

ケータイを出すと知らない番号だった。

またか

電話をとらない俺に敦子は不思議そうに首を傾げる。

「何?イタ電?」

「知らない電番」

敦子は自分のケータイを取り出すと番号を聞いてきた。

画面に表示されている見知らぬ番号を読み上げると、敦子も番号を入力していく。

だが敦子のケータイにもこの番号は登録されていなかった。

「誰だろう? 長いよ? 意外と知り合いじゃない? 」

コールはまだ続いていた。

しょうがないと諦めて、席を立って電話を取る。

「はい、黒沢です」