突然来たって、会える訳ないのに。


そんなこと心の奥底では分かっていたけれど、私はいてもたってもいられなかった。



どこから入れば良いのか見当もつかなかったけれど、私は吸い寄せられるように地下の駐車場へと潜り込む。


「関係者入口」という看板が目に入る。


勿論、周囲にはところどころ警備員が立っていて、訝しげな目で見張られている。


ちょっとでも変な行動を起こしてしまえば、すぐに捕まってしまいそうだ。

どうしようか……と考えていた時、自動扉の向こうから人影が見えた。


サングラスをしていたけれど、独特のオーラで、すぐに彼だと分かった。


「……迅!」


咄嗟に、そう叫んだ。


すると、彼は驚いたような顔をして大きなサングラスを外した。


駆け寄ろうとすると、周囲にいた警備員に両腕を掴まれて、私は身動きが取れなくなってしまった。

不審者だと思われて、どこかへ連れていかれそうになった時、彼が警備員の腕を掴んで解放してくれた。



「すみません、大丈夫っす。こいつ、俺の知り合いなんで」



近付いてきた彼の、がっしりとした体型。フワッと香水の匂いがした。


迅のおかげで捕まらずに済むと「行くぞ」と言って手を引っ張られた。

駐車場に停めてあった、彼の黒い車の助手席に乗り込む。




「なにやってんだよ、お前……!」



呆れたような顔で、驚かれた。



「さっきの生放送を見て、飛んできちゃった」


「はあ……?ったく、お前の行動力には呆れるわ」




車を出すと、夜の街を走り抜けた。