まだ布団の中にいる僕を起こす。

愛しい人を待たせるわけにはいけない、そう思って起き上がろうとした。


「ルアとルマがどかないとパパ起き上がれないよ」


苦笑いで言った。

見ればわかる状況だったにも関わらず、働かない頭はまだ寝ぼけているようだ。


「よいしょ」


その事実に気付き小さな、まだ充分に発達してない体を懸命に動かす。

その姿が癒やしだ。


起き上がって、ぐしゃっと畳まれた布団が視界に入る。


乱雑とはいえど、今日もちゃんと畳んでるんだ。偉いなぁ~。


ルアがこれがいいと言ったピンクの布団。
ルマが選んだ、青色で星が描かれている布団。

僕のは白色の無地の布団だ。


一つ一つが思い出のもの。


「はやく~!」


ルアが一足先に行って、急かしてくる。


「先に顔を洗ってから行くよ」

「だめ!」

「わかった、わかった」


洗面台へ向いていた足を和室の部屋へと切り替える。

ふわっとお線香の匂いが鼻をついた。

仏壇に写真が置いてある。
その笑顔はいつも切なそうに見える。

先に正座をしたルアが手を合わせてから、話し掛けていた。


「まま、おはよう!今日ぱぱが寝坊しました!」

「起きるの遅かったぁ」


恥ずかしい…。
ルアが僕の暴露話をして、即座にそう思った。

きっと彼女は今、天で笑っているだろう。

このきれいな笑みで笑っているならいいのだが、やはり恥ずかしい。

ふぅっと息を吐いたあと、僕も手を合わせ、話し掛けた。


“おはよう。元気にしてますか。さっきのことは忘れてください…。
……まだ自分の息子とか娘だって自覚はあまりしないけど、君によく似ている笑顔で笑うんだ。本当に似てる”


「ぱぱずるい!」

「ずるしてるぅ」


思わず笑った。


“こんな風に愛しいって思うんだ。この子たちのことは安心して僕に任せて!
それじゃあ……また”


最後の挨拶が決まらず、戸惑った感じになった。


「ずるい~!」

「ははっ、ごめんごめん」

「なんて話してたの?」

「なんてぇ~?」


膝に乗って聞いてくるルアとルマに僕は誤魔化した。


「ルアの寝顔が可愛かったって」


ルアの顔が赤くなった。


「ルマはぁ?」

「ルマは走る姿がかっこいいって」


ルマの顔もリンゴみたいに真っ赤になった。