巣に還る蟲。

「そろそろ眠るわ」

「やめろ」

「どうして?」

「困るんだ」

「それは残念だわ」

「二度と起きなくなれば待てなくなる」

「……」

「起きる瞬間を待つ事が出来なくなる」

「起こしてくれるんでしょう」

「起こせない。……起こしたくない」

「どうして?」

「もう、好きじゃなくなっているかもしれないからだ」

「そんな事は有り得ないわ」

「どうしてだ」

「朧君が、わたしを好いているからよ」

「どうして、そう考える」

「わたしが、朧君を好いているからよ」

「……」


朧君に触れる。


伝わって来るのは、冷えている感触。

それは、どちらのものなのか。


わたしには、もう分からない。