となりの紀田くん




「そんなに泣くほど、楠が好きなんだろ?強がんなよ…………」






ぎゅっ





へ?





ふわりと体が動いて
私よりも体の大きい
桜庭くんの腕に包まれる





「さ、桜庭くん!?」






「好きだ………お前のこと」






「へ!?」






あまりに突拍子もない言葉に
間抜けな声が出る………






いや、確かに好きなんだけど
それは設定上の中の話で





でも真剣な顔と口調で
冗談なのかそうじゃないのか
判断出来ない…………






「俺、榎本さんが好き」






「桜庭くん…………」






桜庭くんはゆあが
好きなんじゃないの?






「ねえ、キスしていい?」






へ!?!?





キス??





慌てて返事を返そうと
した時にはもう遅くて
すぐ目の前まで桜庭くんの
顔が近づいてきている






鼻と鼻がぶつかるか
ぶつからないかの瀬戸際






こ、こんなとこ
梓くんに見られたくない!!






私は思いきり目を瞑ったーーー






けど………………





ドシャンッ






という派手な音に私は
瞑っていた目を
恐る恐る開けるーーーーー






そこには尻餅をついている
桜庭くんの姿と






もの凄い形相で
彼を睨み付ける
梓くんの姿があって………






混乱状態の私は
何一つ理解出来ないまま
立ちすくむ…………





何で梓くんが
ここにいるの??