*鈴side*
桜庭くんの提案で
今日は4人での
Wデートの日
桜庭くんが
私を好きだという
設定で
梓くんに嫉妬させようと
したけれどまったく効果なし。
少しは心配したり
怒ってくれたりしても
いいんじゃない?
それとも、あの子の
方が大切なのかな?
あの子の方が
私より好きなの?
思わず落としてしまった
携帯をゆあが拾って
唖然とする………
みんな言葉も出ないみたい。
「ありがとう……みんな。もういいよ」
もう十分やってもらった。
「本当にいいのか?」
「いいの。自分の好きを押しつけて重荷になりたくないし………きっとこれが梓くんの気持ちなんだと思う」
しょうがないよ。
人の気持ちは時に
変わってしまうから。
「榎本さん、ちょっと来て」
急に声のトーンが
下がったかと思えば
桜庭くんが私の
手を掴んで歩き出す
「ちょっと瑠威!」
「おい、桜庭!」
ゆあと紀田くんの声が
同時に重なる。
「紀田とゆあは来ないで。」
後ろを振り返りもせず
二人にピシャリと冷たく
いい放った桜庭くんは
私の手を掴んだまま
離さない………
だいぶ進んだ
ところで我に返り
「桜庭くん!本当、大丈夫だから!ゆあたちのとこ戻ろ?」
慌てて彼を塞き止める。
「じゃあ聞くけどさ………何が大丈夫なの?」
桜庭くんは立ち止まると
私の目を真剣に見据えて
少し口調を強める。
私は、その真剣さに
気圧されて反射的に
顔を反らしたーーーー
「え…………っと。それは………。」
考えたところで
何も答えられない…………
大丈夫って何が?
答えられないかわりに
沢山の涙が出る
大丈夫なわけがない………
だって梓くんが
大好きだからーーーーーー

