となりの紀田くん




その日から
ゆあは紀田を
避けるようになり





やって来た体育祭。






あれだけ二人の間に
溝が生まれたのに
簡単に埋るなんて。





「何してんだよ、ゆあ………あいつ本当はもっと速いのに」





隣で紀田がそわそわしながら
そんな事を呟く





他クラスの心配なんかして
バカなんじゃないの?





まあ、でもさ俺も
ゆあには頑張って欲しいから






「ゆ……「おい!しっかり走れゆあ!お前速いだろ!」







俺がそれを口にするよりも先に
紀田が大声で叫ぶ。






今まで泣きそうだった
ゆあの顔が一気に明るくなり
それと同時に速まるスピード






抜かされた分を巻き返すように
ぶっちぎりの一位独占
になったゆあ







「よしっ!」







小さくガッツポーズをして
喜ぶ紀田ーーーーーーー






紀田ってこんな顔するの?






ああ、そうか。
ゆあにだけの特別な顔か。







でも今のでウチのクラスが
大きくリードした





このままだったら
楽勝で勝てる!!







「俺が勝ったらゆあは諦めろよ」







「残念、離す気ねえから」







強がっちゃって。







「はぁ……はぁ。はいっ………瑠威!」






走ってきたゆあから
バトンを受け取って





一気に走り出す。






しかし予想外にも
紀田は速くて
あっと言う間に
距離が縮まる





その差は五メートル





悪いけど譲らないよ。