となりの紀田くん




「続きまして…………第一学年による………………」







体育祭の種目が
次々と行われていくなか
私はグラウンドを
ボーッと眺めていた。






「どうしたの?ゆあ。そんな浮かない顔して」






いつのまにか隣に
座っていた鈴が
心配そうに私の顔を
覗き込む…………





「鈴…………」





私は瑠威とのことを
鈴に全部話したーーーーー






ーーーーーーーーーーー





「そんな事があったの。んー、気持ちわからなくもないけど………避けてるのは良くないかな」






鈴が少し難しそうな顔をして
顎に手を当てるーーーーー





「だって紀田に何て言っていいか分からなくて。瑠威の事は、ずっと幼馴染みだと思ってたし。確かにかつては恋心もあったけど………それは昔の話で…………」






「うーん、難しいね…………」






苦笑いを浮かべながら
立ち上がる





そしてくるっと振り返って





「でもさ、一番大切なのは………ゆあの気持ちなんじゃない?」





首を傾けながら
笑顔を見せる鈴





私の気持ち?





私の気持ちはーーーーー。





ーーーーーーーーー





「あ、次俺らの番だぜー!」





「おう!」






私たちの学年が
一斉に動き出す





次は私たち
二年生の全員リレーか。





「ゆあ行こう?」





「うん!」






とりあえず今は
走ることに集中して






終わったら
ちゃんと考えよう。






入場門に集まるなり
クラスごとに別れる





「げっ」





何でこうなる…………






集中したいと思った矢先
隣で不機嫌そうに私を
見下しているのは






紛れもなく紀田くんでした。