となりの紀田くん




「嫌いなわけないじゃん。むしろその逆」






「良かった!」






瑠威の言葉にホッとして
自然と笑みが溢れる





「好きだよ」






「私も!」






「違う」






「え?」







「ゆあは分かってない」






ぐいっ





怒ったような
拗ねたような
そんな顔をした
瑠威が私を引き寄せる






そしてーーーーーーーー






ちゅっ






微かに聞こえたリップ音






私………キスされた?






「これでわかった?むしろわかってくれなきゃ困るよ」






ちょっと怒り気味な
口調で私に笑顔を向け
そんな言葉を残して
去っていった。






え?え?






これって……………。






っていうかキス!?





「おい」




ドキッ





急な呼びかけに
ドキリと心臓が跳ねる





振り返ればそこには
紀田がいてーーーーーー






「紀田…………なんで?」






「いや、桜庭がここにいるからって。つーか紀田に戻ってるし」





はぁとため息をつく紀田に
聞こえるか聞こえないかの
微妙なトーンで返事する






「そっか………」






どうしよう。
紀田の顔がまともに見れない






「何かあったのか?」





不思議そうに
俯いた私の顔を
覗き込んでくる。






「何でもない!待っててくれてありがとう!!帰ろっ」







罪悪感と後ろめたさで
いっぱいのこの感情を
私はどうしたらいいんだろう?






ーーーーーーーーー





あの日から数日が経ち
今日は体育祭ーーーーー





あれから私は
紀田を避けてばかりだ。






紀田がもし私と瑠威の
キスの事を知ってしまったら
きっと傷つく…………





そんな紀田の悲しい
顔を見たくない。