となりの紀田くん




「最初は確かに憎んでた……でも、いつの間にか愛してしまっていた」






要さんは私に刃物を
突き付けながら
語り始める……………






「何、いってんだよ?いいから、ゆあを離せ!」







「来ないで!!」






何故こうなってしまったのか
まったく状況が掴めない。






要さんが紀田を好き?






「許されない想いを消すために、裕也をたくさん傷つけた……私から離れていかないように縛り付けた。」






「要さん…………」






自分の気持ちに
逆らってたってこと?
貴女、不器用すぎるよ。






「なのに、この子に出会って裕也は変わった。激しかった女遊びもなくなって………裕也が私から離れていく事が怖くて仕方なかった………」






微かに震えている
要さんの体……………







「ねえ、裕也…………私はずっと貴方が好きだった。でも、許されなかった。嫌われても側にいられれば、それでいいと思った。なのに少し会わないうちに変わった貴方にとても苛立ちを覚えた」






止まらない言葉
彼女の真実






「今さら何だよ…………」






紀田が苦しそうに
顔を歪める






「だから、もう一度深く傷つけてやろうって思った…………私以外には心開けないように。でももう、許すから…………私の元へ帰ってきて。お願い、私を捨てないで…………」






なんて自分勝手な人なんだろう?
こんだけ紀田を苦しめておいて。






要さんの気持ちが
わからないわけじゃない。
でも、要さんのしたことも
十分に許されない事だ。







「今さらおせえんだよ。俺はゆあ以外は、もう好きになれない。だから俺らの関係を終わらせよう」






どんなに理由があっても
紀田の心に傷をつくった
過去は拭えない。







「戻らないって言うなら死んでやる!!」






急に叫んで私から離れ
走り去るーーーーーー






その横には車







「危ない!!要さんダメっ!!」






キィィィーーーーーーーッ







ドンーーーーーーーーーッ!!








鈍い音が響き渡ったーーー







「い、いやぁあああああああああ!!!」