「まじ、置いてくなんてありえない!」
「てめえがモタモタしてっからだろ」
ムカつく!!
「バカ!アホ!」
「て、てめえ…………まあいいや。」
「何がいいのよ!?」
「秘密」
そう言って悪戯に笑い
自分のと私の鞄を持って
空いてる方の手で
私の手を掴む
「帰んぞ………」
「う、うん………」
そうやってさ
無造作に手を繋がれたら
ちょっと…………いやかなり
期待しちゃうじゃんか。
ーーーーーーーーーーー
「送ってくれてありがとう」
「おう、じゃーな」
「待って!!」
背を向けて歩き出そうとした
紀田を慌てて呼び止める
「何?」
呼び止められて
不機嫌な顔をする
紀田の気持ちは
よくわからないが………
「明日の………クリスマスイブのデート、マジで行くの?」
とりあえずこれだけは知りたい。
冗談だったら
かなりショックだし
そんな私の質問に
不服を感じたのか
さらに不機嫌な顔をして
「ったりまえだろ。すっぽかすんじゃねーぞ」
私を指差す
「そっか………良かった」
紀田の一言で
安堵の溜め息とともに
言葉が漏れる
「え?」
不機嫌な顔を一変させて
驚いたような顔をする
紀田に向かって
「楽しみにしてるから!紀田こそすっぽかさないでよね!」
満面の笑みで指を指し返す
「お前さあ………」
そう呟いて
急に近づいて
きたかと思えば
ふわっ
っと引き寄せられる
「ちょっ、ちょっと!」
「まじ、ズルいから」
は!?何が!?
ズルいって何!?
「全然、意味わかんないし!ってか、然り気無く抱き締めるのやめてくれない?」
本当は嬉しいけどね。
「お前が可愛いのが悪い」
「は!?」
前から思ってたけど
「私のどこが可愛いわけ!?」
「秘密。教えるわけねーだろ、バーカ」
ベシッ
「いたっ!」
私にデコピンを
喰らわせるなり
恒例の悪魔スマイルを
浮かべるこいつには
もはや殺意しか
芽生えてこない………。
あたし、やっぱ
バカかもしれない
こんな性格悪男(せいかくわるお)
を好きになるなんてーーーーー
「俺も楽しみにしてるからな。」
けれど、こんな性格悪男の
一言でドキッとしてしまう
自分がいるわけで…………
性格悪いことを知った上で
彼の本当の優しさに
気づいてしまった瞬間から
私はもう紀田の虜に
なってたんだと思う。

