となりの紀田くん




停電とともに
沸き上がる恐怖





恐怖で何も
話せない………






蘇るのは恐ろしい記憶






怖い……怖いよ。





震える体
握る拳に力が入る





誰か明かりをつけて!!!





ぎゅっ






不意に抱き締められ
身体中に暖かい
温もりが走る





顔を見なくたって
紀田だって事が
すぐに分かった。





「大丈夫。俺が守るから」






そう言って
私の頭を撫でてくれる





こんな暗闇のなか
私が一人で震えてる事に
気づいてくれた





暗くて見えないハズなのに
私を選んで抱き締めてくれた。





"俺が守るから"なんて
やっぱり紀田はズルいよ。






私は紀田にしがみつき
溢れそうな涙を必死に堪えた。





やっと気づいた。
自分が逃げている事に……
私、やっぱり紀田が好きだ。





どんなに頑張って
忘れようとしたって
忘れられるわけないのに。





そんな私の自分勝手で
羽麻くんを利用している私は
最低な人間だーーーーーー






たとえ、紀田が
他の誰を好きでも





私は私。






自分の気持ちを
全うすればいい。






しばらくして明かりがつき
それと同時に離れていく紀田





このパーティーが終わったら
ちゃんと羽麻くんに言おう。






私は小さく拳を握りしめた。