となりの紀田くん




「ききききき紀田!!ご、ごめん」






慌てて近くにあった
布巾で紀田の顔を拭く





「バカ!お前それ雑巾だから!」





紀田の隣にいた
羽麻くんが
私の持っている
布巾を指差す





視界に入る雑巾と
ついには笑っていない
紀田の顔






「お前、ちょっと来いよ………」






「ちょ、ちょっと!」






紀田が私の手を引いて
店を出ていくーーー






「お、おい!」






そんな羽麻くんの
声は紀田に聞こえて
いなかった





ーーーーーーーーー






「ちょっと………ごめんってば!だから離してよ!」






「…………………」






シカトですか?






「無視すんなバカ!」





グイッ




「わっ!」





不意に引かれる腕





なぜ路地裏?






「ちょっと紀田!一体何の………」






「いいから黙れ。…………あそこ見ろ」





紀田が路地裏から
少し顔を出して
指を指す





私も顔だけ出して
覗いてみるーーーーー





え、要さん?





どうして要さんが
ここにいるの?





「てっきり、水を吐きかけて雑巾で顔を拭いたから怒ってるのかと思ってた……」






「まあ、怒ってるけどな。主な理由は要の姿が見えたからだ」






私が小声で呟くと
紀田が呆れ顔で答える





結局、怒ってるのね………





「でも、何でここに要さんが?」






「恐らく、悠斗と関係があるんだろ………」





悠斗?
ああ、昨日のか。





紀田の言葉を
理解するのに
数秒かかったが





すぐに思い出したーーーーーー