「ごめん、今すごい空耳が聞こえたんだけど………」





梓くんが真顔で言う
紀田は羽麻くんを
睨み付けるばかりで
何も言わない………





「だから………空耳じゃなくて、内倉は俺の………」






「ああああああっ!!!そうだ!ほらクレープ食べよ!!梓くんお願い!生チョコクレープ3つで!」







私は再度おかしな発言を
しようとした羽麻くんの
言葉を慌てて遮る






「え?あ、うん。作ってくるね………」





ふぅ…………
危ない危ない。





私が安心して
そっと胸を撫で下ろしたのも
束の間………





鬼の形相と化した紀田が
私の腕を力強く掴む





「ちょっ、痛い!」





「………バカ猿」






鬼の形相してたかと思えば
いきなり悲しそうに
俯いて呟く………





な、何?
なんでそんな
悲しそうなの?






私がそう聞こうと
思った瞬間………





「はい、お待たせ!」





クレープを持って
梓くんが戻ってきた





私は出かけていた
言葉を飲み込んで






「梓くん、ありがとう!!」





3人でその場を後にした。





ーーーーーーーーー




3人で歩きながら
クレープを食べる…




「「うぇ」」





クレープを口にするなり
汚い言葉を漏らす二人





「いきなり何?」





私は一人美味しく
クレープをいただきながら
首を傾げる





「くっそ甘……」





「お前よく、こんなもの食えるな……」





羽麻くんに続いて
紀田が私を凝視する





「何で?普通に美味しいじゃん!」





「俺は甘いの嫌いなんだよ……」






「そんなこと知るか!!!」






言って悲しくなる………
私は好きな人のこと
何にも知らないんだね。