となりの紀田くん




「紀田……」




「あ?………なんだ内倉か」





なんだって何よ!
なんだって………





「鈴が一時間だけ、休憩してきていいって!」





ムカッとした私は
ちょっと怒鳴り気味に言う




「何、怒ってんだよ?で……お前は?」





「べ、別に。私も休憩入る」





「あ、そう。ちょうどいいな………行くぞ」





そう言うなり私の手を
引いて歩き出す紀田





「あ、ちょっ!紀田!」





私の言葉をスルーして
歩き続ける




何よ………
昨日は要さんを
庇ったくせに。




これじゃあ……
忘れたくても
忘れられなく
なっちゃうじゃん………





「そこのお二人さん、俺も混ざっていいかな?」





不意に聞こえてきた声に
私と紀田は止まって振り返る





そこには笑顔の羽麻くんがいた。





「は?無理」




紀田が羽麻くんを
威嚇するように睨み付ける





何で紀田は羽麻くんを
睨んでるの………?





何か………
ますます紀田が
わからなくなってきた





「紀田ならそう言うと思ってたよ………まあ、勝手に内倉の左隣を歩かせてもらうけど」





「お前、仕事はどうしたんだよ?」





「あー、心配しないで!俺も今から休憩なんだ」





「ちっ」





ニコニコな羽麻くんに
対して不機嫌な顔の紀田





なに?なんなの?
この状況!?




ーーーーーーーーーー




言葉の通り
私の左隣を歩く羽麻くん




そして私の右隣では
しっかりと手を繋いでくる
不機嫌顔の紀田がいて





なんか物凄く
不自然な感じで
歩いてる………




羽麻くんは紀田とは違って
イケメンではないんだけど……




ちょっと短めの茶髪を
ワックスで散りばめていて
見た目は凄い爽やかな感じ
まあ、いわゆる普通男子





中身めっちゃドSだけど!!!





そんな羽麻くんと
イケメンすぎな
紀田の間に私がいれば





自然とみんなが
私たちに視線を
向けてくるわけで………。




そりゃそうだ………




はたから見たら
いかにも普通な私と
羽麻くんは、お似合い
カップルに見えるだろう。




でも何故そこに
紀田がいるのか………?




そんなこと私にもわからない……