となりの紀田くん




*優亜 side*




紀田と別れてから
数週間が経った




あれ以来、紀田とは
一言も話していない




席も離れてるし
ちょうどよかった。





今はあの時
紀田を移動させてくれた
尼川先生に感謝
していたりする





「もうすぐ文化祭だね!」





「そうだねぇ。」





うちのクラスは
女子からの提案で
ホスト喫茶を
やることに決まった





「梓くんのとこは何やるの?」





「えーっとね、クレープ屋さんやるとか言ってたかな!えへへ、楽しみ!」





「だねー、次のLHRは文化祭の準備かな?」





「かもね!」





「ちょっとちょっと、俺も話に混ぜてよ」




隣で悠斗が不満そうに
割って入ってくる





「えー、悠斗アホなことしか言わないからいい。」





「なにそれ!?新手のイジメ?」





紀田はあの日
私と悠斗のキスを
見ていたーーーーー





咄嗟に出てきたのは
特に意味はないって言葉。





悠斗と要さんが
何か企んでいるなんて
言ったら何、仕出かすか
わからないから……





嘘をついた。





私が紀田を
振った理由………





確かにあの日言った
事は私の本心




でも、本来の目的は
別のところにある





鈴と梓くんにも
それは伝えてある




ーーーーーーーー




話は、とあるファミレスまで
遡ることになる…………




ありったけの涙を
出しきった私………





「ごめん………なんか目立っちゃってるね……」





「いや、大丈夫!」





鈴は優しく微笑む




けれどさすがに
視線が痛い………





私があまりにも
ボロボロと泣いているから
周りのお客さんが
訝しげに私たちを見る




「ちょっと…場所変えよっか」





私の提案に二人は頷く。




そしてやって来たのは
近くの公園





適当に座って
暫くの沈黙が続く。





その沈黙を破ったのは私




「私………紀田を信じるよ」




私の言葉に安心したのか
互いに顔を見合せ
微笑みをかける




「でも………別れようと思う」




私のこの一言で
二人とも笑顔が消え




「ゆあ、正気!?」




普段、おっとりしている
鈴が眉をつり上げて
私を見据える………




「正気だよ………今、紀田といたら私はきっとまた、紀田の過去に触れちゃうかもしれない………それに………」





「それに?」




鈴が視線を反らすことなく
私を見据えている




私はゆっくりと
口を開いたーーー