となりの紀田くん



「今までありがとう。大好きだよ………じゃあね………紀田」




優亜は最後に
"大好き"と残して
家に入って行った




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俺は一人帰り道を
トボトボと歩く




あの時………
引き止めようと思えば
引き止められた………




でも出来なかった…





「やっと別れてくれたんだぁ」




ふと聞こえた透き通る
ような甘い声




俺の心をズタズタに
引き裂いた張本人




「要………何しに来た?」




「もう!またそれぇ?」




口を尖らせるなり
俺に抱きついてくる





よくもまあ………
そんなことが言えたな




「おい要」




俺は要を思いきり
引き剥がす




「二度と俺に近づくな……あいつ………昴さんにも言っとけ」





「ハッ………へぇ。そんなこと言うんだ?」





要の顔から笑みが消える





「あの子………どうなってもいいの?」




あの子…?




ってもしかして!?





「お前、優亜に何するつもりだ!?」





俺は要の胸ぐらを掴み
殴りたい衝動を抑え
怒鳴り付ける




しかし要はそれに
動じることなく
冷めきった瞳で




「あの純粋な子の心を踏みにじったらどうなるんでしょうね?」




「お前の望みは叶っただろ?」




「私の望み?」




要が俺をバカにしたような
目で見て嘲笑うーーーーーー