「おい、ゆあっ!!」





紀田の呼び止めるような
声が聞こえたけど
私は紀田たちの姿が
見えなくなるまで
走り続けたーーーーー





学校から少し離れた
商店街で一人
トボトボと歩く







「はぁああああっ」






「あれ、ゆあ?こんなところで何してるの?紀田くんは?」





私が盛大な溜め息を
ついたところで
名前を呼ばれる





見上げれば鈴と
梓くんが立っていた。





「りん………。」






「とりあえず、どっかお店入ろうか?」






私の表情を見てただ事ではないと
判断したのか、鈴が私を促す。






3人でファミレスに入って
席につく………





「で………何があったの?」




最初に口を開いたのは
鈴だったーーーーーー





「要さん………要さんが現れたの。」





私は溢れそうな涙を
唇を噛み締めて必死に耐える






「要さんって確か………あ、海に行ったときに出会った人か!」






鈴の隣に座っている梓くんが
ポンと手を打つ





「そう………。もしかしたら紀田は、本当は要さんが好きなのかも………」





今思えば……………
私、紀田に一度も好きって
言われたことがない………





やっぱり私は
からかわれてる
だけなのかもしれない………





「そんなことないよ!!」





なんでこう紀田のことになると
弱気になってしまうのだろうか。





「紀田くんの過去はわからないけど、きっと紀田くんは要さんのこと好きじゃないと思う」





梓くんが真剣な
面持ちで話す





「そうかな………なら何で私に好きって言ってくれないんだろう………」





気づけば我慢していた
涙がポロポロと溢れだしていて
私は拳をギュッと握った。






そんな私の拳を
鈴が上から優しく
包み込む………






私は紀田のこと………
信じていいの?





「とにかく、僕には紀田くんが要さんを好いてるようには見えない………紀田くんの中での一番は間違いなくゆあちゃんだよ」






「それ………信じていいの?」






「信じてあげて!僕じゃなくて、紀田くんを………」






梓くんの瞳に濁りはない。
私、信じるよ





紀田のことーーーーーー。