それでも、先生が好きでした。






少なからずの不安を抱いたまま

スタートの姿勢に入る。



ふ…っと息を吐いて

前を見据えた時。


「…え?」


視界に飛び込んできた姿に

思わず気を取られた。



なに、してるの…??



視線の先にいたのは

退場門に寄り掛かってこちらを見ている先生。


先生はニコりと微笑むと

あたしに向かって握りこぶしを突き出した。


…頑張れ、ってこと?


なんだか温かい気持ちが込み上げてきて

クスクスと微笑んでしまう。


そんなあたしに、先生はムスッとしたけど

あたしも同じように拳を向ければ

ゆっくりと、頷いた。



あぁ、そうか。

先生は緊張を解してくれたんだ。


信じられないくらい落ち着いている今の自分に

そう納得する。


ありがとう、先生。

あたし頑張るから

見ててね。





審判の生徒が

高らかにピストルを掲げる。



「よーい………っ!」



そして大きな銃声とともに

あたしは駆け出した。