周囲が沈黙する中で唯一こちらを見ている女生徒の姿があった。高遠とうかの姿が。
　俺はとうかについて誤解をしていた。
　不良みたいな身なりからクラスメートから恐れられて、孤独な存在だと勝手に思い込んでいたのだが、全然そんなことはなかった。
　とうかは机の上で胡坐をかいて数人の女生徒達と談笑していたのだった。
　普通に考えたらそれが当たり前で、とうかは社交的な人間である。閉鎖的な俺とは全く違う人間なんだと痛感させられる。
　なんで、こんなにもショックを受けているんだろうかと考えると…………その光景が懐かしいもので、俺自身が欲しているものなのかもしない。
「なんだよ、夏希じゃないかよ。びっくりしたわー。何々、うちに会いに来てくれたの」といって机の上からぴょんと下りると、談笑していた生徒達に手を振ってこちらに近づく。