「ねえ、一度も美味しいって言葉を聞いてない」唇を尖らせる真白。
うーん、不味くはないんだけど美味しいかと問われるとわからない。なにせ手作り弁当なんて食ったことがないんだから。詩織も作ってはくれなかったしなぁ。
「正直に言うと上手いか不味いかはわからない。こういう弁当って食ったことがないんだよ」
「運動会とか遠足の時に夏希のお母さんは作ってくれなかったの?」
「……母さんか、俺は母親の事、覚えてないんだよね、物心ついた時にはいなかったし、父さんに訊いても何も答えてくれなくてさ、だから生きてるのか死んでるのかもわからねーんだわ。……今となってはどうでもいいんだけど」