しばらくして全回復とはいかないが立ち上がるくらいには回復したので俺たちは喫茶店をでた。別れるつもりで臨んだのに今は情けなくも詩織に肩を借りている。
 「本当にかっこうつかない」ボソッと呟いた。
 詩織は訊いてないふりをしてくれて、ここに来て初めて俺が聞きたかった言葉を言った。
「ごめんなさい。夏希の事を考えてなくてごめんなさい。」
 心が軽くなったような気がした。ずっと聞きたかった言葉。
「俺こそ殴ってしまってごめん」
「うぅん、殴られたなんて思ってないよ。ただあの日の夏希が怖くて、私も殴られるんじゃないかと思って中々近寄れなかったの。本当は悪いことしたって思ってる。ごめんね。本当に」
 なんとなく当初の予定とは思惑がずれてしまった。なあなあに付き合っているというよりは一度ちゃんとリセット出来ただけましかもしれない。
 家の玄関の前で俺たちは握手を交わした。
「私たちこれで友達だね」どこか寂しそうな顔ではあった。今にも泣き出しそうな顔だったけれど、振り返り詩織は言った。
「もう一度私に恋さしてみせるわ」