ガチ恋

真白は知ってか知らずかはわからないけれど、こうしてチクチクと詩織の名前を出しては胸を刺してくる。その度に俺は詩織と向き合わないといけないという思いに駆られながら、子憎たらしい真白の顔を見るのだけれど、とうの本人はすまし顔でケロッとしている。今も自分で作った弁当を食べながらスマホゲームに没頭して、オタクライフを満喫して、俺の顔色を伺おうともしない。
「あれから詩織に何か言われたか?」
その原因を探るために俺は真白に尋ねた。真白は小さく首を振る。
「佐藤さんと話したのはあの一度だけだよ。それよりも、夏希はどうして詩織って呼び捨てにするの?もう友達でもないのに」
 言われて、俺は、ハッと気づいた。この二人の前で名前で呼ぶことは俺がまだ詩織に対して親しみの感情があると明言しているようなものなのかもしれない。でも今更、詩織を佐藤さんと呼ぶのも違和感がある。
 真白はヤキモチを焼いているのだろうか?
 俺は真白の作った弁当に視線を下ろして、自分の質問が墓穴だったと反省をした。同時にとうかのほうは何も気にしていないようだった。
 やっぱり真白は地雷女だと認識しなおすのだった。ただし、俺に限り。