私が小学2年生の頃、うちの家は自己破産をした。

原因は父親の営んでいた小さな建設事務所の営業不振、地域で少し話題になるくらいには大きかった火災の発生だった。親戚皆が集められ、幼かった私はその重い雰囲気に不安になりわんわん泣いたのを覚えている。

父は度々法律事務所に足を運び帰りが遅くなる毎日。
ときたま来る黒スーツの人達に、「話しかけられないように」と親から言われていた私は、学校帰りに家の前にいたその人達にバレないよう、近所の子供を装い、黒の車で帰るのを待っていた。

私の宝物の中で唯一お金の高いエレクトーンは、徴収されないようにと隣の家の車庫に匿われていた。

父と母は家ではあまり笑わない人だった。ずっと思い詰めたような表情で過ごし、理不尽なことで叱られた。
嫁姑問題も深刻で、母はほんとうに追い詰められていたと思う。

そんな中、8歳の私は毎日に少しだけ楽しみがあった。

それは、車庫にエレクトーンを匿わせてもらっている家の同い年の男の子と遊ぶことだった。

同じ小学校に通っているみたいだったが、同じクラスになったことは無い。ただ、うちの家が大変だということを知ったらしいその男の子は私を何かと構うようになった。

登下校で見かけると必ずと言っていいほど私に駆け寄ってくるし、放課後は遊ぼうと家を訪ねてきていた。

私はというと正直男の子が苦手で、向かいのお家に同い年の子がいることはずっと前から知っていたが、登下校も学校も女の子たちとばかりいて、男の子というだけで眼中になどこれっぽっちもなかったのだ。

だけどあまりにも熱心に誘われるから、1度遊んだみたところ、気の優しいでも、面白い男の子だと判明したのだ。

それからは毎日毎日、5時のチャイムが鳴るまで遊んだ。鳴っても遊んで、探しにこられて怒られた。ちょうど、田んぼのオタマジャクシわ20匹捕まえたところだったというのに。