「ね?ね、お母さん。あたし本当にこれでいいの?ヘンじゃない??」



あたしは、鏡の前とお母さんの前を行ったり来たり。




「ヘンなんかじゃないわよ。かわいいわよ。だいじょーぶだから行ってきなさいってば!」



何度も行き来するあたしにあきれたのか、お母さんに家から追い出された。



今日のあたしはいつもより、かな~り気合の入った服装。




だって、だって……!



梓先輩との初デートだもん!!





少しでもいつもよりかわいく見られたい。




「柚菜ちゃん~コッチ!!」


「うひゃっ?」



たくさんのひとごみの中で梓先輩の手を見つけた。


あたしはその手の場所に近づいていこうと思うけど、ひと波に押されて梓先輩にたどりつけない。






「柚菜ちゃんっ」


手が伸びてきて、あたしの手をにぎった。



梓先輩の手で、あたしはほっとする。



もう会えなくなるかと思っちゃった。