「お、おじゃましまーす…」




大きい門の前で、あたしは小さな声を出した。


でもそんな声、誰にも届いているはずがない。


最愛のひと、伸に届くはずもない。




いつも忙しく走り回っている使用人…や


無駄に広い庭の整備をするひと。


さらには掃除のおばさんまでもが休みをもらっているらしい。




その家の持ち主のお父さまはもちろん多忙すぎて家にいるはずはなくて。


このバカにでかい豪邸、屋敷…にいるのは、伸のみ。




あたしは一人きりの彼氏の家に、遊びに行きます。



と、いいますか。お父さまに頼まれました。



7月11日に家をあけるので、伸と二人でお留守番しててくれないか…って。


ご飯とか、作ってくれたら助かる…って。