しばらく抱き合って、アナウンスがなる。
伸先輩といられるのもあと、少し。
「自家用ジェット機で行かないんですか?」
「ん。そんな任せらんねぇし。これから一人でがんばんなきゃいけないのに、世話になったら意味ねぇし」
伸先輩は強い。
これで伝えなかったら、あたしなんて忘れて、一人でがんばってただろうな。
「どうして、あたしに転校するって教えてくれなかったんですか?」
あたしの疑問。
一番の大きな問題。
「あぁ~…ゴメン」
「ゴメンだけじゃ伝わりませんっ!」
抱きしめ合って、少しだけ体をはなして伸先輩を見上げた。
あたしには時間がないんだから!
いつもはそらしてしまう伸先輩の瞳を強く見つめる。
「……俺だけがお前のこと好きだから。思い出はキレイなほうがいいじゃんか」

