それはわたしが、中学生の時、2年間片思いをしていた相手でした。
彼の名前は坂本太陽(さかもとたいよう)くん。小学校は別で、中学校から一緒になりました。

わたしは小学校の時からずっといじめを受けていて、中学生になっても小学校からの同級生、そして新しいクラスの子からもいじめを受けるようになりました。

毎日のように暴言を吐かれ、靴を隠されたり、時には上履きに画鋲が入っていたこともありました。
わたしは本当に辛くて、何度も死にたいと思いました。

そんな中学1年の秋11月に、彼は親の転勤でわたしが通っている中学校に転校生としてやってきました。
彼はわたしのいる一組に転校してきて、席はわたしの斜め後ろでした。

そんなとき彼は、放課後、ひとりいじめられて泣きそうになっているわたしを見て、こう優しく声をかけてくれたんです。
「大丈夫か?……泣きたいときは、我慢しなくていい。思いっきり泣けばいい」

わたしは彼の言葉で涙をこらえることが出来なくなって、思いっきり泣きました。
だけど坂本太陽くんは、そんなわたしを優しく抱きしめてくれて、ずっと優しく頭を撫でてくれました。  

その時からわたしは、坂本くんのことを好きになりました。坂本くんはいつも優しくて、わたしがいじめられているとき、助けてくれました。

坂本くんとは、それからもずっとクラスが一緒でした。
そんな坂本くんのことが大好きで、わたしが坂本くんの考えない日はありませんでした。こんなにも好きなんだと思ったとき、わたしには彼に告白をする勇気というのはありませんでした。

近くで見守ってるだけでにしよう。彼に気持ちを伝えたら迷惑だ。そう思っていました。
彼はずっとわたしのことを見守ってくれました。何かあれば、俺をいつでも頼っていいからなと、優しく言ってくれていました。

だけど中学3年生の夏休み、坂本くんは部活からの帰り道、自転車で走っていたとき、信号無視したトラックにはねられて亡くなってしまいました。

あのとき、告白しておけばよかった。そう本当に後悔しました。少しでもちゃんと気持ちを伝えておけばよかった。そう思いました。

あれがわたしにとって、初めての初恋でした。そして叶わなかったけど、大切な恋でした。