君と二人で

「ごめんなさい。好きな人がいるんです」

 私はそれだけ言うと佐伯くんをその場に残し、足早に彼の後ろを追いかけた。でも、校内の植木鉢を置いてある場所を探しても彼はどこにもいなかった。

 仕方がないので部室へと戻ったが、そこには校内に飾ってあった花瓶から回収してきた花を片付けている二年生が二人いるだけだった。

「部長がどこにいるか知らない?」

「えっ、先輩と一緒じゃなかったんですか?」

「うん、ちょっと……」

 二年生の二人とも分からない様子であった。しょうがなく部室を出た私は一人寂しくとぼとぼと廊下を歩いている。

 運動音痴。

 歌も下手。

 成績は普通。

 でも花のことは誰よりも詳しいよね。

 いつもついてる寝癖。

 ずれてる眼鏡。

 眠たそうな優しい目。

 好きだよ。

 私は誰がなんと言おうが、部長、君が好きだよ。

 ふと、窓の外に目をやり中庭を見た。花壇にはダリアやアマリリスの花が咲いている。二年生の終わりに彼と一緒に球根を植えた。二人で植えた。綺麗に咲くと良いよねと二人で話しながら。

 私は自然と中庭の花壇へと向かった。彼と私の二人で土づくりから植え終わるまでの作業を初めて二人だけでした、アマリリスとダリアの咲く花壇。

 あの時の彼はとても楽しそうだった。いつもよりよく喋り、よく笑っていた。そんな彼の横で一緒にいれた事が幸せだった。

「おかえり、松任谷」