神殺しのクロノスタシス3

「何も感じない人なんていないよ。きっとすぐり君は、何か感じても、我慢しようとして、それで笑うんだ。本当は泣きたくても、誤魔化して笑っちゃうんだ」

「…何でも笑って誤魔化す、嫌な奴だと思った?」

「ううん。いっぱい我慢して偉い。偉いよ」

…。

…不思議な感覚だ。

『八千代』も、同じものを感じたのだろうか。

「すぐり君はもっと、自分の心に素直に生きて良いと思うな」

「…自分の心に素直に…生きてるつもりなんだけど。割と」

「まだ足りないよ。もっと素直で良いんだよ。すぐり君はどうしたい?どう生きたい?どんな顔をしたい?思いのまま、素直に生きようよ」

「…」

…思いのまま、素直に。

生きられるのなら、生きたかったよ。

だから俺は、その手を払い除けなければならない。

それが正しい選択。

…なのに。

「…変なこと言うなぁ、ツキナって」

「…」

「俺はいつだって、自分の心に素直だよ」

「…また、誤魔化そうとしてる?」

「そんな訳ないじゃん。さぁ、もうこの話は終わり」

俺は、鉛筆を置いて立ち上がった。

そのとき、ツキナの手が俺の頭から離れて。

そのとき一瞬だけ、胸が締め付けられるような気持ちになった。

けど、それだけだ。

「罰掃除行かなきゃ。三日坊主になっちゃうよ」

「…すぐり君…」

「今日は監視しなくて良いの?見張ってないと、逃げ出すかもしれないよ」

「…そうだね。見張ってないと…どっか行っちゃうかもしれない」

そうだよ。

俺は見張ってないと、すぐどっか行っちゃうよ。

俺の行くところなんて、最早地獄以外、何処にもないけどね。