神殺しのクロノスタシス3

─────…罰掃除、二日目。


「ちゃんとやってるかー!」

「…やってるよ、失礼だな」

「宜しい!」

またしても、抜き打ちでツキナがやって来た。

昨日、あれだけ掃除したのに。

今日にはもう、花びらが散りまくって、目も当てられない。

桜って、咲いてるときは一瞬で、あとは人間に迷惑をかけるだけだよな。

人の人生みたい。

役に立つときは一瞬だけで、あとは迷惑をかけるだけ。

ろくでもない生き物だよ。

「…ねーすぐりくーん」

「どうかした?」

俺が黙々と掃除しているところ、退屈したのか、ツキナが声を掛けてきた。

暇なんだったら手伝ってよ、と言いたいところだが。

それだと罰掃除の意味がない。

「すぐり君の家族って、何処にいるの?王都?」

俺の手が、ピタリと止まった。

…家族?

「…何処だと思う?当ててみてよ」

「王都じゃないの?じゃあ…シャネオン?」

何処それ。

多分、ルーデュニア聖王国の主要都市の一つなのだろう。

俺はルーデュニア生まれじゃないから、ルーデュニアの地理は分からない。

「ぶっぶー。不正解」

「むむっ…。じゃあ、反対の…エクトル?」

「ぶっぶー。ざ~んねん」

「えぇ~」

まさかジャマ王国、とは思わないだろうな。

ジャマ王国の人間が、ルーデュニアで、しかもイーニシュフェルト魔導学院に入学してるなんて、まず有り得ない話だし。

…いや。

『八千代』という前例がある以上、もう有り得ない話ではないのかもしれないな。

「当てられないなら、教えられないなぁ」

「むむ~…。何処なのよ~…。ヒントは?」

ヒントかぁ。

「遠いところだね。遠いところ。多分ツキナが思ってるよりずっと遠いところだよ」

「え~?そんなに遠いところから来たの?」

「いかにも」

長い旅路を経て来ました。

何なら国境も越えてきました。

「じゃあ、家族になかなか会えなくて寂しいね。手紙でやり取りしてるの?」

「残念ながら、してないんだよな~」

「えっ。何で?」

何で?って。

そこできょとんと首を傾げられるってことは、ツキナは幸せな人生を送ってきたってことなんだろう。

…ちょっと、羨ましいねぇ。

「俺の家族、何処にいると思う?」

「実家にいるんじゃないの?遠いところにある実家」

「ざんね~ん。ツキナは不正解ばっかだね」

落第生だ。

学院長室で、『八千代』と放課後学習会する?

「…?何処にいるの?」

「俺の故郷より、もっとずっと遠いところ」

「んん~?…ヒントは?」

俺は、答える代わりに指を差した。

真上を。

「…」

ツキナは、しばし考えて。

ようやく、その意味を察したようだった。