神殺しのクロノスタシス3

…翌日。

俺は放課後学習会を放り出して、校舎玄関に向かった。

掃除しろって言われたから、仕方なく。

掃除とはいえ、適当にその辺掃いておけば良い…と。

思っていたのだが。

「うわー…。予想以上に掃除し甲斐があってドン引きなんだけど…」

忘れていた。

季節は春。四月の真ん中。

校庭に並んだ桜の、散った花びらとその軸が。

まばらに地面を汚していて、凄く汚い。

しかも、風向きが悪いのか、散った花びらは全部校舎周りに集中している。

やべぇ。

「これを一人で掃除しろとか…。鬼だろ、あの子…」

名前何て言うんだっけ…。あぁ、ツキナだ。

クラスメイトなんだった。

愚痴っていても仕方ないので、俺は竹箒を手に、掃除を開始しよう…と、

一歩歩き出した、そのとき。

「悪い子はいねがー!」

「うわっ、びっくりした」

玄関の花壇の茂みから、花びらを被った女子生徒が、ぴょこんと出てきた。

何処に潜んでるんだ。

おかしいな、この学校魔導師育成校だったはずなのに、将来くの一志望の生徒もいるのか、と思ったら。

「あ?ツキナじゃん…」

「すぐり君!」

他ならぬ、僕に玄関掃除を命じた女子生徒が、そこにいた。

何で潜んでた?

「何やってるの…?」

そんな、葉っぱと花びらにまみれて。

どうでも良いけど頭の上、芋虫乗ってるよ。

「抜き打ちチェックだよ!すぐり君がちゃんと罰掃除してるか、監視しに来たの」

「なんだ、そんなこと…」

「なんだとは何だ!昨日サボったんだから、今日もサボってるかもしれないでしょ!」

ごもっとも。

「だから、ちゃんとやってるか監視しに来たの。やってる?」

「今からやろうとしてたところ」

「宜しい。じゃあ、しっかりお掃除しなさい」

「面倒だなぁ…」

「文句言わなーい!」

文句の一つも言いたくなるよ。

ようやく『八千代』の顔を見なくて済んだと思ったら、今度はこの仕打ち。

何が嬉しくて。

それより。

仁王立ちして、俺を監視してるのは良いけど。

「…頭の上、芋虫乗ってるけど。良いの?」

「ほぇ?」

ほぇ?じゃなくて。

そんな茂みに身を潜めてるから。

植物だと勘違いされたのだろう。

良かったね。それ、学院長の分身じゃなくて、本物の芋虫だよ。

「芋虫…?」

「うん。飼ってるの?頭の上で」

「…」

「…」

「…ほぇぁぁぁぁ!!」

奇声をあげ始めた。

将来くの一には向いてないな。芋虫くらいで叫んでるんじゃ。

「取って取って取って~!すぐり君取って~!」

半泣きですがりついてきた。

面白い。

「え~?どうしようかな」

「酷い酷い意地悪!取ってったら~!」

「でも俺、罰掃除で忙しいしな~」

「やだぁお願いお願い!お願いしまうぅすぐり君取って~!」

…にやり。

俺は、ツキナの頭でうにょうにょしてる芋虫を、指で摘まんだ。

「取ったよ」

「と、取った?もういない?」

「いないよ」

「良かったぁ。すぐり君ありが、」

「じゃーん」

顔を上げたツキナの目の前に、俺の指に摘ままれてうにょうにょしてる芋虫。どアップ。

「…」

ツキナは、しばし真ん丸の目で芋虫を凝視し。

そして。

「きゃーっ!!」

想像通りのリアクションをありがとう。

こういうのは、ベタなのが一番面白いってね。