「そっ…そっ…それはないよ!すぐり君それはない!」
黙らせておいたシルナが、声をあげた。
「あのねぇ、令月君の手作り菓子を食べたくないのはまだ分かるとして、いやそれも分からないけど!でも!でもそれはないでしょ!それは酷いでしょ!」
同感。
しかし、すぐりはあくまで冷たかった。
「だから、夢見過ぎだって言ってるじゃん。ついこの間まで、殺し合いするほど憎んでた仲だったのに、何で桜餅一つで仲良く出来ると思うの?考えが甘いんだよねー」
「…それは…」
「自分の方が強いから、自分の方が先輩だから、調子に乗ってる?無意識に俺を下に見てるのが、物凄くムカつく」
「…『八千歳』を下に見たことなんか、一度もないよ」
令月は、あくまで冷静に、顔にべっちょりついた桜餅を引き剥がした。
そして、何を思ったか。
投げつけられた桜餅の残骸を、自分の口に入れた。
…食べるのかよ。
自分で作ったから、無駄にしたくないのかもしれない。
「うん、美味しい」
それは良かった。
「ただでさえ、顔も見たくない相手と毎日毎日一緒に勉強させられて、うんざりしてるのにさー。その上、仲良くしろ?冗談でしょ。勝手なこと言わないでよ。俺はまだ、『八千代』に気を許したつもりはないから」
「…すぐり君…」
「いずれにしても、『八千代』の命はもう長くない。もう一人の暗殺者が、必ず『八千代』の首を獲る。仲良くして何になるんだよ。馬鹿じゃないの?付き合ってられない」
すぐりは、そう吐き捨てて立ち上がった。
「もうここには来ない。こんな茶番を続けられるなら、教室で自習でもしてた方がマシだからねー」
「あっ、すぐり君…」
「…大変ですねー、思春期の友達事情って」
「!?」
いつの間にか。
そこに、ナジュがいた。
お前…いつの間に。
しかもナジュの手には、令月の桜餅。
お前、いつパクった?
「あ、普通に美味しい」
勝手に食べるなよ。
「殺したいほど憎い相手と一緒にいなきゃならないなんて、大変ですねー。でもしょうがないですよね。あなたはその、殺したいほど憎い相手に負けたんだから」
「…!」
すぐりの顔色が変わった。
しかし、ナジュの方は顔色一つ変えず、桜餅をもぐもぐしながら。
「好きにしてくれれば良いって言ったのは、自分じゃないですか。じゃあ好きにされてくださいよ。令月さんと仲良くされてくださいよ。あなたは敗者なんだから」
「…っ!」
「…あれ?」
…?
ナジュが、何故か一瞬首を傾げたが。
「…もう、付き合ってられないね」
すぐりは気にせず、ナジュに背を向けて学院長室を出ていった。
黙らせておいたシルナが、声をあげた。
「あのねぇ、令月君の手作り菓子を食べたくないのはまだ分かるとして、いやそれも分からないけど!でも!でもそれはないでしょ!それは酷いでしょ!」
同感。
しかし、すぐりはあくまで冷たかった。
「だから、夢見過ぎだって言ってるじゃん。ついこの間まで、殺し合いするほど憎んでた仲だったのに、何で桜餅一つで仲良く出来ると思うの?考えが甘いんだよねー」
「…それは…」
「自分の方が強いから、自分の方が先輩だから、調子に乗ってる?無意識に俺を下に見てるのが、物凄くムカつく」
「…『八千歳』を下に見たことなんか、一度もないよ」
令月は、あくまで冷静に、顔にべっちょりついた桜餅を引き剥がした。
そして、何を思ったか。
投げつけられた桜餅の残骸を、自分の口に入れた。
…食べるのかよ。
自分で作ったから、無駄にしたくないのかもしれない。
「うん、美味しい」
それは良かった。
「ただでさえ、顔も見たくない相手と毎日毎日一緒に勉強させられて、うんざりしてるのにさー。その上、仲良くしろ?冗談でしょ。勝手なこと言わないでよ。俺はまだ、『八千代』に気を許したつもりはないから」
「…すぐり君…」
「いずれにしても、『八千代』の命はもう長くない。もう一人の暗殺者が、必ず『八千代』の首を獲る。仲良くして何になるんだよ。馬鹿じゃないの?付き合ってられない」
すぐりは、そう吐き捨てて立ち上がった。
「もうここには来ない。こんな茶番を続けられるなら、教室で自習でもしてた方がマシだからねー」
「あっ、すぐり君…」
「…大変ですねー、思春期の友達事情って」
「!?」
いつの間にか。
そこに、ナジュがいた。
お前…いつの間に。
しかもナジュの手には、令月の桜餅。
お前、いつパクった?
「あ、普通に美味しい」
勝手に食べるなよ。
「殺したいほど憎い相手と一緒にいなきゃならないなんて、大変ですねー。でもしょうがないですよね。あなたはその、殺したいほど憎い相手に負けたんだから」
「…!」
すぐりの顔色が変わった。
しかし、ナジュの方は顔色一つ変えず、桜餅をもぐもぐしながら。
「好きにしてくれれば良いって言ったのは、自分じゃないですか。じゃあ好きにされてくださいよ。令月さんと仲良くされてくださいよ。あなたは敗者なんだから」
「…っ!」
「…あれ?」
…?
ナジュが、何故か一瞬首を傾げたが。
「…もう、付き合ってられないね」
すぐりは気にせず、ナジュに背を向けて学院長室を出ていった。


