神殺しのクロノスタシス3

シートから解放されたベリクリーデが、一言。

「ふー、やれやれ、困ったもんだ」

それは俺の台詞だ。

殴るぞこの野郎。嘘だけど。

それよりも。

この黒いシート、引っ剥がしながら、一つ気づいたことがある。

このシートと、各所についている金具を見て、何処か見覚えがあると思ったら。

ただのシートじゃなくて、これはテントだ。

キャンプとかで使う、結構ガチめのハーフテント。

何で、こんなものがこんなところに…?

その答えは、目の前にいる女に聞けば分かる。

「…ベリクリーデ」

「何?ジュリス」

「お前、今日は何をしようとしてたんだ?」

「キャンプ」

「…」

「…何で黙るの?」

…何で、はこっちの台詞だ。

分かるよ。キャンプ、夢とロマンがあるもんな。たまに無性にやりたくなるよな。

衝動的にテント立てて、外で一夜を明かしたくなるときもあるよな。

…って、そんなもんあるか。

「馬鹿かお前は?いきなり何考えてるんだよ!?」

「何で怒ってるの…?」

「お前がアホなことするからだろ!」

「キャンプしてるだけだよ」

何処が?

俺が見たのは、キャンプとは程遠い何かだったよ。

「何でいきなりキャンプなんだよ?いきなり何を思い立って、そんなこと…」

元々、アウトドア大好きって訳でもないだろうに。

何かきっかけがあるはずだ。

ベリクリーデを、キャンプに走らせた何かが、

「これを読んだの」

ベリクリーデは、サッ、と一冊の本を取り出した。

その本のタイトルは。

『猿でも分かる!初めての本格キャンプ』

「…」

「これに書いてあったから、頑張った」

…そうか。

「…その本は、何処から見つけてきたんだ?」

「本屋さん。店員さんのオススメコーナーに置いてあったの」

やはりか。

恋愛指南本を置いたり、かと思えばキャンプの本を置いたり。

一体、どういう趣味の店員がいるんだよ。その書店は。

「本を読めば賢くなる、ってジュリスが言ってたから」

「…」

まぁ、それは言ったけどさ。

言わなければ良かったんじゃないかと、今更後悔してるところだよ。