それでも、折角買ってきたケーキが勿体ないので。
「あんまり好きじゃなくて良いから、とにかく食べろ。勉強ばっかりじゃ、息が詰まるだろ」
「そう!そうそう!ケーキ食べよう!皆でケーキを食べれば、世界は平和になる!」
そこまでは言ってない。
「えー…。もう、しょうがないな…」
「分かった。食べる」
よし。二人共鉛筆と筆を置いたぞ。
まずは、親睦を深めるきっかけを作ってやらないとな。
「ほら、好きなの選べ」
シルナは、Lサイズのケーキボックスに、たくさんのカットケーキを買ってきていた。
何個あるんだよ、これ。
ケーキバイキングか。
しかも、全部種類が違う。
さては、全種ワンカットずつコンプしてきたな?
「『八千歳』は何にする?」
「『八千代』が何にするかによる」
「じゃあ、僕は抹茶が良い」
「なら、俺が抹茶をもらう」
「…」
「…」
…。
敵がい心、丸出し。
「じゃあ抹茶は『八千歳』にあげて、僕はチーズケーキにしよう」
おっ、年下に譲ってあげる令月。
優し、
「そう?じゃあ俺やっぱりチーズケーキにするよ」
「…」
…。
「…じゃあ僕が抹茶を、」
「なら俺も抹茶が良い」
「それなら僕はチーズケーキに」
「やっぱり俺もチーズケーキが良い」
こいつらに、ケーキを決めさせたら。
多分、このまま夜が明ける。
すぐりの嫌がらせが半端じゃない。
いや、同じ種類を複数買ってこなかったシルナも悪いんだけど。
それから、一つ言わせてくれ。
「…そもそも、抹茶味ないぞ」
「…」
「…」
二人共、手が止まった。
ごめんな。
シルナの奴、基本的に自分の好きな味しか買ってこないから。
抹茶味とか、ちょっと苦い味のケーキは、買ってこないんだよ。
「…じゃあチーズケーキ…」
「俺もチーズケーキ」
「なら僕は何…。ショートケーキ」
「俺もショートケーキが良い」
「いい加減にしろお前ら」
永遠に決まらないよ。
もう良い。こっちが決める。
「令月がチーズケーキ!すぐりはショートケーキ!はい!これで決定!」
「えー…。俺、ショートケーキあんまり好きじゃないんだけど…」
「文句言うな!」
お前がいちいち令月に対抗するからだ。
選択肢を与えるな。
「チョコ!チョコケーキは私が食べるからね羽久。私にチョコケーキを残し、」
「で、俺がチョコケーキ!」
「僕には何ケーキくれるんですか?」
「何処から出てきたんだナジュは!お前はイチゴタルトだ」
「ありがとうございまーす」
それぞれに、紙皿に乗せたケーキを渡す。
「私は…?私のチョコケーキ…」
「シルナはなし!」
「えぇぇぇぇぇ」
たまにはダイエットしろ。
シルナは放置だ、放置。


