神殺しのクロノスタシス3

ベリクリーデのいる小屋は、すぐに分かった。

慌てた村の女性達が、彼女の小屋をひっきりなしに出入りしていたから。

いかにも、大事なものを隠そうと必死になっていると言わんばかり。

そこだな。

地面に降り立った俺は、恐怖に怯える村の女達に対峙した。

「…そこを退け」

敵でもない女と、やり合う趣味はない。

ましてや、武器も持たない女に。

退いてくれさえすれば良いだけだ。

しかし。

「不浄の者を入らせるな!お前達、生き神様を守るのだ!」

「は、はいっ!」

俺の前に立ち塞がるように、出刃包丁と石斧を持ったボディーガードらしき若い男達が、小屋から出てきた。

…あぁ、そうかい。

どうしても、叩きのめされないと気が済まないか。

だが。

生憎俺は、抵抗する術を持たない弱者を、いたぶって遊ぶ趣味はない。

俺が杖を振ると、男達の手から武器が零れ落ちた。

「えっ!?」

「な、何で…」

そして。

彼らが気づいたとき、俺はもう、男達の前にはいなかった。

彼らの背後に降り立ち、堂々と小屋の中に入った。

予想通り。

そこには、黒いシーツを敷いた寝台に寝かされた、ベリクリーデがいた。

「ベリクリーデ…!」

駆け寄ると、彼女の手首から、ポタポタと血が流れているのが分かった。

手首だけじゃない。

ベリクリーデの顔は、青白いを通り越し、土気色になっていた。

まるで拷問を受けたかのように、口元にべったりと血の跡がついていた。

それが、無理矢理歯を引き抜かれた跡だと分かり、俺は一瞬にして、頭に血が上るのを感じた。

こいつら…!

「お前ら…俺の…ベリクリーデに、何をした!!」

俺の渾身の怒声に、中にいた婆さんが、腰を抜かしていた。

「女の顔に、よくも…!これがお前らのやり方か!恥を知れ!!」

相手が、魔法を使えない一般人でなかったら。

思わず手を出してしまいそうなほどに、俺は憤っていた。

そして今は、それ以上に大事なものがある。

「ベリクリーデ!ベリクリーデ…しっかりしろ!」

俺は、寝台に横たわったベリクリーデを腕に抱いた。

ようやく、ようやくこの身体を抱き留めることが出来た。

もう二度と、決して離したくないと思った。