神殺しのクロノスタシス3

エリュティアの指示に従い。

俺達は、深い山の奥へと入っていった。

そこに、ベリクリーデの『痕跡』があるらしい。

最初の方は、かろうじて舗装された山道だったが。

途中から、舗装もされていない、本物の獣道になっていった。

少し間違えば、入り組んだ森の奥で迷子になってしまいそうだ。

それでも何とか歩みを進められるのは、エリュティアという、頼もしい道先案内人がいるからである。

「エリュティア…。本当に、この道で合ってるのか?」

獣道を歩きながら、俺はエリュティアに尋ねた。

「はい…。ベリクリーデさんの『痕跡』が残っています」

「ベリクリーデが…よくこんな獣道を、迷わずに行けたな…」

魔導部隊の隊舎の中でさえ、行方不明になるような奴が。

しかし。

「いえ、ベリクリーデさんだけではなく、別の人間の『痕跡』も残ってします。その人に導かれたんでしょう」

「…」

ベリクリーデを連れ去った張本人か。

間違いなく…桔梗谷の人間だ。

素人で助かったな。

これが『アメノミコト』とかだったら、絶対に連れ去ったときの『痕跡』は、残してくれていなかっただろうから。

ほんの僅かな『痕跡』でも、残してしまえば。

うちの優秀な探索魔法使いの目を、謀ることは不可能。

ましてや、相手は魔導師の存在すら知らない、本物の素人。

『痕跡』の消し方など、知る由もない。

その点では、相手が素人であることに助けられた。

お陰で、エリュティアの探索魔法が捗る。

それに、手がかりがもう一つ。

「…!この足元」

クュルナが、何かに気づいた。

言われて足元を見て、俺もそのことに気がついた。

「これ…車輪の跡、か?」

「そのようですね…」

泥やら雑草やらにまみれて、ほとんど消えかけているが。

何か、馬車か…人力車のような、車輪のついたものを引き摺った跡が、所々残っている。

成程、ベリクリーデとその一行は、確かにここを通ったのだ。

この車輪の跡。

そして、エリュティアの探索魔法。

もう間違いない。

この先が、目的地桔梗谷なのだ。

「待ってろよ、ベリクリーデ…」

俺が必ず、お前を迎えに行くからな。