神殺しのクロノスタシス3

「要するに、神隠しの亜種みたいなもんだな。不思議な力…ってのは、恐らく俺達みたいな魔導師…魔力を使える人間のことを指すんだろう」

「私もそう思います。私の育った村でもそうでした。魔導理論の浸透していない土地では、魔導師はしばしば、不思議な力を持つ、占い師のような扱いを受けることがありますから」

成程、クュルナもそういう生まれだったか。

魔力は別に、占いの類とは違うんだがな。

人間、未知の力を持つと、それは神からもたらされた神秘的な力だと思い込むものだ。

「でも…じゃあ、ベリクリーデさんは、生き神様に選ばれた…ということですか?」

と、エリュティア。

「その可能性は大いにあるな」

あいつは魔力を使えるし、そして若い女でもある。

桔梗谷の人々の言う、生き神様の条件を満たしている。

「何故女性に固執する?男でも、魔法を使える者はいるだろう」

「それは、奴らに聞いてみないことには、分からないな」

何か、女でなくてはならない理由があるのだろう。

それが何なのかは知らないが。

「…とにかく、行ってみないことには分からないな。…桔梗谷に」

恐らく、間違いないだろう。

桔梗谷の連中が、王都でベリクリーデを見つけ。

ベリクリーデの力を「生き神様」とやらのそれと勘違いした奴らが。

ベリクリーデをトラーチェに、そして桔梗谷に連れてくる為に、アナベルの家族を人質に取った。

だから、ベリクリーデはここにいる。

この土地に。件の桔梗谷に。

生き神様として。

…冗談じゃねぇ。

「エリュティア。桔梗谷の場所は分かるか?」

「…大体の場所は。ベリクリーデさんの『痕跡』を辿ると、森の細い山道に続いていました。恐らくその先が…」

…桔梗谷、ってことだな。

「よし、そうと分かれば…」

行こう。

生き神様じゃない。俺達の仲間を。

俺の相棒を。

ベリクリーデを。

助ける為に。