神殺しのクロノスタシス3

俺はトラーチェの市街地に入り、不審者にならない程度に、周辺を見渡しながら歩いた。

かなりのド田舎…じゃなくて。

かなり長閑な土地なので、駅周辺はまだしも、市街地に入ると、家の周りに田んぼや畑のある家が多かった。

人の姿はまばらだ。

畑作業に精を出す者もいれば。

道のど真ん中で、井戸端会議に興じる奥様方もいる。

…さて、誰に尋ねたもんかな。

…なんて、悩んでる暇が惜しいよな。

俺は、早速畑仕事に精を出すお爺さんに声をかけたが。

「今は忙しいんじゃ!見て分からんのか!」との有り難い言葉を賜り。

仕方なく引き下がり、井戸端会議に参加させてもらおうと、奥様方に声をかけると。

「桔梗谷?そんなことどうでも良いわよ、それよりお兄さん何処から来たの?」

「学生さん?何処に住んでるの?何処の学校?今日は休みなの?」

と、おばさん特有のマシンガントークを受け。

こちらが質問するまでもなく、向こうから質問攻め。

これじゃあ聞き込みもままならないと、愛想笑いを浮かべて立ち去る。

つーか、学生じゃねーし。

何なら、あんたらの百倍以上年寄りだし。

何でこの歳になって、学生扱いされなきゃならんのだ。

さて、どうしたものかと思っていると。

「…ん?」

古ぼけた大きな家屋の、縁側で。

湯呑を手に、日向ぼっこに興じる、まるで絵に描いたようなお婆さんを発見。

…これは、チャンスなのでは?

一つ心配事は、あのお婆さんが、認知症を患っていないかだ。

かなりご年配のようだから、有り得る。

とはいえ。

迷っている暇はないので、とにかく話しかけてみることにしよう。