神殺しのクロノスタシス3

それは、最早儀式でも、修行でもない。

これが何なのか、私は知っている。

収容所で散々見聞きして、そのうちのいくつかは、こうして体験して身を以て知っている。

これは、拷問と言うのだ。

言うことを聞かない囚人に、言うことを聞かせる為の行為。

次々と運ばれてくる、あの凍るように冷たい水を、無理矢理口に押し込まれ。

お腹が妊婦のように、パンパンになるまで水を飲んだら。

お腹の上に木の板を置いて、男の人二人が、勢いよくその上に乗る。

そしたら私は、耐えきれずに水を吐く。

散々「穢れた」水を吐いたら、もう一度「神聖な」水を飲まされ、それを繰り返す。

これは確か、そう…水拷問だ。

修行なんかじゃない。

私は、拷問を受けなきゃいけないほどに、悪いことをしてしまったのだ。

そして、拷問はそれだけじゃない。

散々水拷問を受けて、気を失いかけたところへ。

今度は、あの若い男性二人が、私の両隣について立って、私の顔を鷲掴みにして、再び無理矢理口を開けさせた。

また水を注がれるのかと思ったが、違っていた。

水の代わりに口の中に突っ込まれたのは、先程見た金属のペンチ。

そのペンチが、私の奥歯をガッチリと掴み。

渾身の力を込めて、歯を引き抜かれた。

一本だけじゃなかった。

何本抜かれたのか覚えてないが、多分後で鏡を見たら、みっともない歯抜けみたいになってることだろう。

その後。

またしても手首を切って瀉血させられる、あの修行…いや、拷問が始まった。

昨日も血を抜かれたのに、今日も。

その頃にはもう意識が朧気で、何をされても、声を出そうとも思わなかったし、出せなかった。

ただ、痛みと苦しみの中で、私はずっと考えていた。

ジュリス、見てる?私、ちゃんと頑張ってるよ。

見てる?って、見てないよね。ジュリスは王都にいるんだから。

…ねぇ、ジュリス。