その日の翌日、と言うか。
日付が変わる頃、私は例のお婆さんに起こされた。
空に月が昇り、「神聖なる時間」が来るのを待っていたそうだ。
そして、また動きにくい例の服を着せられ。
連れていかれた先には、松明の灯った小屋。
小屋の中には、黒いシーツをかけた、寝台のようなものと。
大きなたらいが、床に置かれていた。
そして、先程見た赤い宝石付きのナイフも。
…?
「さぁ、生き神様、こちらへ」
私は、お婆さんの手を借りて(誰かの手を借りなきゃ、歩きにくくて転けそう)、寝台に導かれた。
そこに寝かされ、私は何人かの人々に囲まれた。
…これから、手術される人みたい。
「私、何されるの…?」
手術?手術なの?
「生き神様の身体から、不浄な血を抜くのです」
本当に手術だった。
「血?血を抜かれるの?」
「そうです。神聖であるはずの生き神様の血を捧げても、水晶玉には何も映らなかった…。それはつまり、生き神様の血が穢れているからなのです」
そうなんだ。
私の血、汚いの?
「それも仕方のないこと。生き神様はこれまで、この神聖な谷ではなく、穢れた土地で、穢れた人々と接し、穢れた食物を口にしてこられたのですから」
「…」
「生き神様を清める為には、まず身体の中の不浄な血を洗い流し、谷の澄んだ空気によって浄化しなくてはなりません。その為に…」
「…穢れてなんかないよ?」
「は?」
私は、神様としては、穢れてるのかもしれないけど。
でも。
「王都も、王都にいた人も、穢れた人なんていなかったよ」
ジュリスも、皆も、良い人ばかりだった。
皆、こんな厄介な私に、優しくしてくれたよ。
ジュリスだって、美味しいクレープや、美味しいチョコレートを食べさせてくれたよ。
あれは決して、穢れたものなんかじゃなかった。
それなのに。
谷の人々は、私の言葉に戦慄し、お婆さんは肩を戦慄かせていた。
「な、なんということ…!生き神様が、桔梗谷以外の場所を穢れていないなどと…!やはり、生き神様の中には不浄なものが巣食っているのですね」
「…」
私の中にいるのは聖なる神様だから、別に不浄ではないと思うけど。
しかし、お婆さんは。
「今すぐ、今すぐ生き神様の穢されてしまった魂を、浄化してさしあげるのだ。すぐに」
「は」
私の周りを取り囲んでいたお姉さんや、お兄さん達が。
私の両手首を取り、そして細い鋭利なナイフを手にした。
「生き神様よ、どうか穢れを祓い、我らの生き神様に戻ってくださいませ」
そう言うなり、私の両手首に、鋭い痛みが走った。
あろうことか、あのナイフで、思いっきり引き裂いたのだ。
「痛い…」
死なないけど。このくらいでは、私は死なないけど。
でも、痛いものは痛い。
ボタボタと流れる血が、たらいの中に溜まっていった。
あのたらいは、この為にあったのだ。
凄く痛い。
でもしばらくすると、私の身体が勝手に再生を始めた。
傷は塞がり、血は止まった。
けれど。
「まだまだ。こんなものでは、穢されてしまった血は洗い流せませぬ」
お婆さんの指示で、再び手首を切られる。
折角治ったのに。
またしても、鋭い痛みと共に、生温かい液体がボタボタと流れ出した。
また痛い。
こんな風にして。
私は、傷が治る度に切られ、また傷が治る度に切られを繰り返された。
それは、神聖なる儀式と言うよりは、拷問を受けているかのようだった。
日付が変わる頃、私は例のお婆さんに起こされた。
空に月が昇り、「神聖なる時間」が来るのを待っていたそうだ。
そして、また動きにくい例の服を着せられ。
連れていかれた先には、松明の灯った小屋。
小屋の中には、黒いシーツをかけた、寝台のようなものと。
大きなたらいが、床に置かれていた。
そして、先程見た赤い宝石付きのナイフも。
…?
「さぁ、生き神様、こちらへ」
私は、お婆さんの手を借りて(誰かの手を借りなきゃ、歩きにくくて転けそう)、寝台に導かれた。
そこに寝かされ、私は何人かの人々に囲まれた。
…これから、手術される人みたい。
「私、何されるの…?」
手術?手術なの?
「生き神様の身体から、不浄な血を抜くのです」
本当に手術だった。
「血?血を抜かれるの?」
「そうです。神聖であるはずの生き神様の血を捧げても、水晶玉には何も映らなかった…。それはつまり、生き神様の血が穢れているからなのです」
そうなんだ。
私の血、汚いの?
「それも仕方のないこと。生き神様はこれまで、この神聖な谷ではなく、穢れた土地で、穢れた人々と接し、穢れた食物を口にしてこられたのですから」
「…」
「生き神様を清める為には、まず身体の中の不浄な血を洗い流し、谷の澄んだ空気によって浄化しなくてはなりません。その為に…」
「…穢れてなんかないよ?」
「は?」
私は、神様としては、穢れてるのかもしれないけど。
でも。
「王都も、王都にいた人も、穢れた人なんていなかったよ」
ジュリスも、皆も、良い人ばかりだった。
皆、こんな厄介な私に、優しくしてくれたよ。
ジュリスだって、美味しいクレープや、美味しいチョコレートを食べさせてくれたよ。
あれは決して、穢れたものなんかじゃなかった。
それなのに。
谷の人々は、私の言葉に戦慄し、お婆さんは肩を戦慄かせていた。
「な、なんということ…!生き神様が、桔梗谷以外の場所を穢れていないなどと…!やはり、生き神様の中には不浄なものが巣食っているのですね」
「…」
私の中にいるのは聖なる神様だから、別に不浄ではないと思うけど。
しかし、お婆さんは。
「今すぐ、今すぐ生き神様の穢されてしまった魂を、浄化してさしあげるのだ。すぐに」
「は」
私の周りを取り囲んでいたお姉さんや、お兄さん達が。
私の両手首を取り、そして細い鋭利なナイフを手にした。
「生き神様よ、どうか穢れを祓い、我らの生き神様に戻ってくださいませ」
そう言うなり、私の両手首に、鋭い痛みが走った。
あろうことか、あのナイフで、思いっきり引き裂いたのだ。
「痛い…」
死なないけど。このくらいでは、私は死なないけど。
でも、痛いものは痛い。
ボタボタと流れる血が、たらいの中に溜まっていった。
あのたらいは、この為にあったのだ。
凄く痛い。
でもしばらくすると、私の身体が勝手に再生を始めた。
傷は塞がり、血は止まった。
けれど。
「まだまだ。こんなものでは、穢されてしまった血は洗い流せませぬ」
お婆さんの指示で、再び手首を切られる。
折角治ったのに。
またしても、鋭い痛みと共に、生温かい液体がボタボタと流れ出した。
また痛い。
こんな風にして。
私は、傷が治る度に切られ、また傷が治る度に切られを繰り返された。
それは、神聖なる儀式と言うよりは、拷問を受けているかのようだった。


