神殺しのクロノスタシス3

「お、おかしい…。伝承によれば、生き神様が血を捧げれば、水晶玉は桔梗谷の行く末を映してくれるはず…」

「ババ様…これは一体…」

ババ様と呼ばれているお婆さんも、私の手首に布を巻いてくれたお姉さんも。

何だか酷く困惑しているようだが。

私だって困惑している。

水晶玉を覗けと言われたって、自分の顔以外何も見えないのだから。

「生き神様、もっとよくご覧になってくださいませ。心の耳を澄ませ、しっかりと水晶玉に魂を込めて覗くのです。そうすれば、自ずと見えてくるはずです。桔梗谷の風景が…」

「そうなの?」

「さぁ、さぁやってみてくださいませ。桔梗谷の未来の為に」

…こんな丸い玉で、未来が見えるのだろうか?

どういう理論でそうなってるのか知らないが。

これが務め、任務と言うなら、仕方ない。

もうちょっと集中して、よーく見てみよう。

そうしたら、何か他のものが見えてくる…。

…はず?

「んー…」

眉間に皺を寄せて、じーっと水晶玉を睨むように見つめる。

見つめて見つめて、瞬きを忘れて目が乾いて。

それでも、結局見えるのは。

…落書きされた、自分の顔だけ。

うん、見えない。

「…やっぱり何も見えないなぁ」

10分くらい、水晶玉と睨み合ってみたけど。

にらめっこ負けちゃったよ。

「そ、そんな…。生き神様ともあろう方が、血を捧げたにも関わらず、水晶玉に拒まれるなど…」

「ババ様…。これは一体、どういうことなのでしょう。生き神様に何が…」

何も起きてないけど。私。

しかし、お婆さんは。

「うむ…。やはり生き神様は、不浄なる土地で、邪気を吸い過ぎたのであろう」

…じゃき?

って何?

「そのせいで、神聖なる力が弱まっている。それが全ての原因だろう」

そうなの?

「生き神様よ、あなた様にはこれから、この谷で修行し、生き神様としての本来のお力を取り戻して頂きまする」

「…私、何すれば良いの?」

「ご心配には及びません。この谷で過ごし、この谷で修行に励めば、すぐにでもお力を取り戻すことが出来ましょう」

「…」

…それを果たしたら、私は任務を終えたことになるのだろうか。

いつになるんだろう。

早く、自分一人でも任務をこなせたよって、ジュリスに報告しに帰りたいのに。

何だか、ややこしいことになってきちゃった…。