神殺しのクロノスタシス3

お婆さんは、一転、疑わしそうな目で私を見た。

「生き神様…。あなた様は、本当に生き神様なのでしょうね?」

えっ。

私を疑ってるのだろうか?

私って、本当に生き神様なのだろうか?

生き神様という呼ばれ方をされたことは、一度もないけれど。

彼らの言う生き神様とは、多分聖なる神を体内に宿す者。

つまり、私のことを指しているのだろうから。

「うん、神様だよ」

それは、素直に認める。

その為に、女王様の極秘任務を受けて、ここに来たんだし。

…あ。

なら、もしかして。

この、変な儀式も、任務のうちなのだろうか?

「ならばおかしい…。生き神様ならば、進んで務めを果たされるはず…。何故…」

「…」

どうしよう。

このお婆さん、困らせちゃった。

私が嫌だ、って言ったから困ってるんだよね?

…嫌だって言うのは、良くないことだ。

だってこれは、私の任務なのだから。

女王様が命じて、ジュリスが私に託した、大事な任務。

ちゃんと果たして帰らないと、きっとまたジュリスに「足手まとい」って言われてしまう。

…仕方ない。

痛いのは嫌だし、やりたくないけれど…。

「…分かった。やる」

「!」

お婆さんとお姉さんは、歓喜してハッと顔を上げた。

「よ、良かった…。生き神様、ご自身のお役目を思い出してくださったのですね」

「きっと生き神様は、長らく神聖なる谷を離れて、穢れた不浄の土地にいらした為、心が乱れておられるのでしょう」

…穢れた不浄の土地って、何処?

あの収容所のことだろうか?

あそこは確かに汚かったけど。

「しかし、ご安心なさいませ。この神聖なる谷で、務めを果たされるうちに、きっと乱れた心も正しく清めらることでしょう」

安心した顔のお婆さん。

そうなんだ。

確かに私の心は、乱れてる…と言うか。

ジュリスにいっぱい迷惑をかけて、悪い子だから。

きっとここにいれば、良い子になって、少しはジュリスに褒められるようになるだろう。

この変な儀式というのは、その為の試練なんだ。

私はそう思って、意を決してナイフを握り締めた。