神殺しのクロノスタシス3

「大体の居場所が分かったのなら、まずは向かってみないことには始まらない。桔梗谷の人々の思惑云々は、ベリクリーデを見つけてからだ」

「…」

「とにかく、まずは仲間を見つける。見つけて、安全に連れ戻す。ベリクリーデの安否が確認出来たなら、女王陛下への報告や処罰なんて、どうということはない些末な問題だ」

「…」

「…どうしたシュニィ。そんな鳩が豆鉄砲食らったような顔をして」

「いえ…。珍しくあなたが知的なことを言うものですから、驚いて…」

それな。

皆思ってたけど言わなかった。

それな。

「な、失礼な!俺はいつも知的だぞ」

「ごめんなさいアトラスさん…。昨日、あなたがアイナに『お人形さん闘技場ごっこ』を教えているのを見て、あぁこの人はもう駄目なんだわ、と思ったこと、謝ります」

「そんなこと思ってたのか!?」

デンジャラスな香りのする遊びだな、おい。

幼児に、ましてや女児に教えて良い遊びじゃねぇだろ。

どうなってんだルシェリート家。

…とにかく。

「アトラス君の言う通りだ。まずは、ベリクリーデちゃんの安否を確認しないと」

「幸い、トラーチェに向かったことは分かってるんだろう?なら、そこから捜査を始めて…」

シルナ・エインリーと、羽久・グラスフィアが続けて言い、

そして。

「人員はどうする?」

無闇が尋ねる。

「まず、探索魔法の使えるエリュティアさんは絶対に必要でしょう。それから…」

「桔梗谷の連中が、何を企んでいるか知れない。エリュティアが行くなら、ボディーガード役に俺も行こう」

と、自分から名乗り出る無闇。

確かに、無闇がいてくれれば。

桔梗谷の連中が、もし武装していたとしても対応出来る。

「もし桔梗谷の方々が、ベリクリーデさんをすぐに返してくだされば良いんですが…」

「…争いになるなら、もう一人くらいはいた方が良いかもね。それも、回復魔法が使える人の方が良い」

と、シルナ。

「そうしてくれると助かる。俺は、回復魔法はどうも苦手だからな」

「ふふ。無闇でも苦手なことってあるんだね」

いつの間にか。

無闇の背後に、彼の持つ魔導書の化身が、ゆらりと現れていた。

名前は、月読だったか。

「うちの天音君に頼んでみようか?」

シルナが言った。

天音か…。あの、回復魔法に長けた魔導師。

今は、イーニシュフェルト魔導学院で保健室の先生やってるんだよな。

「いえ、『アメノミコト』との抗争はまだ終わってませんし、いつ何が起きるか分からない以上、『アメノミコト』の毒魔法に対抗出来る天音さんを、遠くに向かわせるのは得策ではないでしょう」

シュニィが答える。

そうだな。

ただでさえ、イーニシュフェルト魔導学院は少数精鋭なのだ。

そのうちの貴重な一人が抜けているときに、『アメノミコト』からの襲撃があったら。

もし桔梗谷の連中の裏に、別の黒幕がいるのなら。

学院も聖魔騎士団も、万全の状態をキープしていなければならないのだ。

「じゃあ、誰に…」

「私が行きます、と言いたいところなんですが…」

ちらり、と夫のアトラスを見るシュニィ。

するとアトラスは、案の定鼻息を荒くして。

「シュニィが行くなら、俺も行くぞ!」

…随分勇ましいことで。

「…と、こうなるので…」

「さ、さすがに…。聖魔騎士団団長と副団長が、両方不在っていうのは困るね…」

「そうですね。ですから、もう一人はクュルナさんに頼むことにします」

成程、クュルナか。

それは良い人選だ。

彼女はサポーター型の魔導師。回復魔法も、得意ではないにしても使えるし。

それなら…。

「ですから、ベリクリーデさんを迎えに行くメンバーは、エリュティアさん、無闇さん、クュルナさん、そしてジュリスさんの四人ということになります」

…ん?