神殺しのクロノスタシス3

「…それにしても」

と、切り出すシルナ・エインリー。

「何でその…桔梗谷の人は、アナベルちゃんの家族を人質に取ってまで、ベリクリーデちゃんを攫ったんだろう…?」

「…」

…最大の謎だな、それは。

「彼らは…ベリクリーデさんの中に、聖なる神が封印されていることを知ってるんでしょうか」

と、吐月。

話の争点はそこだな。

桔梗谷の連中が、ベリクリーデの本当の「価値」に気づいているのか、いないのか。

もし気づいていないのなら、聖戦の再来は防げる。

だが、もし気づいていて、その上でベリクリーデを利用しようとしているのなら…。

…それだけは、断じて止めなければならない。

「でも、桔梗谷って初めて聞いたけど、ド田舎にあるちっこい村なんだろ?」

「そんな人里離れた村の人々が、ベリクリーデさんの『価値』を知る機会がありますかね」

キュレムとルイーシュが言った。

…俺も、同意見だ。

「そうですね。私の知る限りでは、桔梗谷の方々は、人里から離れて、原始的な暮らしをなさっているそうですし…」

「しかし、何でそんな遠くにいる村の人々が、ベリクリーデの存在を知ったのかは疑問だな」

シュニィと羽久が言った。

それも気になる。

奴ら、トラーチェの山奥から遥々、何だってベリクリーデを見つけたんだ?

で、聖魔騎士団を敵に回すようなことまでして、どうしてベリクリーデを攫っていった?

そう思うと、やはり彼女の「価値」を知っているからなのではないか…と疑ってしまう。

だって、そうでもなきゃ有り得んだろう。

そんな遠くの、辺境の地に住んでいる人々が。

わざわざ王都までやって来て、綿密に作戦を立て、ベリクリーデを拉致するなんて。

彼女の中にいる聖なる神が目的なのではないか、と疑うのも無理はない。

いや…でも。

長年生きてて、経験して分かったことだが。

事実は小説より奇なり、だからな。

俺達はさっきから、俺達の価値基準で考えているが。

もしかしたら桔梗谷の連中は、彼らにしかない価値基準を持って、その上で。

危険を犯してまで、ベリクリーデを攫うに値する理由が、何かあるのかもしれない。

「誰かが桔梗谷の人々に入れ知恵をして、ベリクリーデを攫わせたという可能性は?」

と、無闇。

桔梗谷の連中は利用されただけで、裏に何かしらの黒幕がいるのではないか、という意見だ。

それは勿論、可能性としては充分考えられるだろう。

「そうですね。その可能性もあるでしょう」

と、答えるシュニィ。

心当たりもある。ヴァルシーナとかな。

何せあいつは、洗脳魔法なんて厄介な魔法を使うんだろう?

他人を操って…桔梗谷の連中を使って、ベリクリーデを攫わせた。

有り得る。

シルナ・エインリーは、今ヴァルシーナが動くことはないだろうと予測しているが…。

それだって、完璧な推理ではないのだ。

今は、どんな可能性も考えられる。

「…ともかく」

議論が暗礁に乗り上げかけたところを、団長のアトラスが仕切り直した。