「脅された…?誰に?」
「…アナベルさん、話せますか?」
エリュティアが、アナベルに尋ねた。
泣きじゃくるアナベルは、しゃくり上げるばかりで、言葉にならない。
「…アナベル」
俺が名前を呼ぶと、まるでこれから判決を受ける被告人のように、ビクリと身体を震わせた。
「知ってることを話してくれ。然るべき理由があるのなら、俺は、お前を罰しない。どんな手を使ってでも、お前を守ってやる。だから話してくれ」
「う、うぅ…」
「何で偽の指令書なんか作った?誰に脅されたんだ?」
「あ…あ、き、桔梗谷の、ひ、人に…」
…桔梗谷?
「何処だ?それ」
「…」
俺達は、顔を見合わせた。
「…アナベルちゃんが、指令書でベリクリーデちゃんを向かわせたのは、東方都市トラーチェ…だったね?」
シルナが尋ねる。
アナベルは、必死にぶんぶんと頷いた。
「シルナ、知ってるのか?」
「いや、聞いたことがあるだけだよ。確か、東方都市トラーチェの辺境の地に、人が住んでる谷があるって…」
…そこが、桔梗谷?
「…!そうだ、私も聞いたことがあります。確か、東方都市の山奥に、人里離れた村があると…」
シュニィまで。
物知りで博識の二人が言うなら、その…桔梗谷とやらの存在は、嘘ではないのだろう。
「さすがシルナ…。無駄に長生きしてる訳じゃないんだな」
「うん…。羽久が私に失礼なこと言ってる気がするけど、今はベリクリーデちゃんの安否の方が大事だから、我慢する…」
そうしてくれ。
なんか、同じだけ生きてる俺も侮辱された気がするが。
俺はシルナ・エインリーと違って、ずっとこの世界線にいた訳じゃないからな。
各地を転々として、ルーデュニア聖王国に来たのは、俺の長い人生にとっては、ごく最近の出来事なんだ。
国内の詳しい地理なんて、知る由もない。
「その桔梗谷…とやらの人が、お前を脅したのか?」
「…はい…」
アナベルは、掠れる声で返事をした。
「何でそんなことになった?」
「そ、それは…」
「…」
「…そ、それ…は…」
言葉に詰まるアナベル。
…脅されてる、とか言ってたな。
「まだ脅されてるのか?喋ったら殺されるのか」
「…」
アナベルは、痙攣でもするようにぶるぶると震えていた。
そして。
堰を切ったように泣きじゃくり、その場に蹲った。
「ごめんなさい!ごめんなさい!私、怖くて…!桔梗谷の村人を名乗る人が、いきなり私と私の家族の前にやって来て…!ベリクリーデさんをトラーチェに連れてこなければ、家族を皆殺しにしてやるって脅されて…!」
…!
「許してください、私が悪いんです。悪いことをしたってわかってます!でも…でも、家族を殺されると思うと怖くて…!私は、私はどうなっても良いです。でも、家族は助けてください!家族は何も悪くないんです…!」
「アナベル…」
「お願いします!怖かったんです、私。怖くて…!家族、お父さんとお母さんと…妹が。妹はまだ幼くて…!殺されると思ったら怖くて…!家族には魔導適性もなくて、反抗する力もなくて…!悪いって分かってたけど、あいつの言いなりに…」
泣きじゃくり、罪を告白し、許しを乞うアナベルを。
誰一人、責める者はいなかった。
誰一人、彼女を責められる者はいない。
「ごめんなさい、本当にごめんなさい…!許してください。せめて家族だけは助けてください…!家族は何も悪くない。悪いのは私だけなんです。だから…」
「…顔を上げろ、アナベル」
大人気もなく、アナベルを責め立てた自分が情けない。
そんな事情があったとは、知らなかった。
「…うぅ…」
アナベルは、涙でくしゃくしゃになった顔を上げた。
「…アナベルさん、話せますか?」
エリュティアが、アナベルに尋ねた。
泣きじゃくるアナベルは、しゃくり上げるばかりで、言葉にならない。
「…アナベル」
俺が名前を呼ぶと、まるでこれから判決を受ける被告人のように、ビクリと身体を震わせた。
「知ってることを話してくれ。然るべき理由があるのなら、俺は、お前を罰しない。どんな手を使ってでも、お前を守ってやる。だから話してくれ」
「う、うぅ…」
「何で偽の指令書なんか作った?誰に脅されたんだ?」
「あ…あ、き、桔梗谷の、ひ、人に…」
…桔梗谷?
「何処だ?それ」
「…」
俺達は、顔を見合わせた。
「…アナベルちゃんが、指令書でベリクリーデちゃんを向かわせたのは、東方都市トラーチェ…だったね?」
シルナが尋ねる。
アナベルは、必死にぶんぶんと頷いた。
「シルナ、知ってるのか?」
「いや、聞いたことがあるだけだよ。確か、東方都市トラーチェの辺境の地に、人が住んでる谷があるって…」
…そこが、桔梗谷?
「…!そうだ、私も聞いたことがあります。確か、東方都市の山奥に、人里離れた村があると…」
シュニィまで。
物知りで博識の二人が言うなら、その…桔梗谷とやらの存在は、嘘ではないのだろう。
「さすがシルナ…。無駄に長生きしてる訳じゃないんだな」
「うん…。羽久が私に失礼なこと言ってる気がするけど、今はベリクリーデちゃんの安否の方が大事だから、我慢する…」
そうしてくれ。
なんか、同じだけ生きてる俺も侮辱された気がするが。
俺はシルナ・エインリーと違って、ずっとこの世界線にいた訳じゃないからな。
各地を転々として、ルーデュニア聖王国に来たのは、俺の長い人生にとっては、ごく最近の出来事なんだ。
国内の詳しい地理なんて、知る由もない。
「その桔梗谷…とやらの人が、お前を脅したのか?」
「…はい…」
アナベルは、掠れる声で返事をした。
「何でそんなことになった?」
「そ、それは…」
「…」
「…そ、それ…は…」
言葉に詰まるアナベル。
…脅されてる、とか言ってたな。
「まだ脅されてるのか?喋ったら殺されるのか」
「…」
アナベルは、痙攣でもするようにぶるぶると震えていた。
そして。
堰を切ったように泣きじゃくり、その場に蹲った。
「ごめんなさい!ごめんなさい!私、怖くて…!桔梗谷の村人を名乗る人が、いきなり私と私の家族の前にやって来て…!ベリクリーデさんをトラーチェに連れてこなければ、家族を皆殺しにしてやるって脅されて…!」
…!
「許してください、私が悪いんです。悪いことをしたってわかってます!でも…でも、家族を殺されると思うと怖くて…!私は、私はどうなっても良いです。でも、家族は助けてください!家族は何も悪くないんです…!」
「アナベル…」
「お願いします!怖かったんです、私。怖くて…!家族、お父さんとお母さんと…妹が。妹はまだ幼くて…!殺されると思ったら怖くて…!家族には魔導適性もなくて、反抗する力もなくて…!悪いって分かってたけど、あいつの言いなりに…」
泣きじゃくり、罪を告白し、許しを乞うアナベルを。
誰一人、責める者はいなかった。
誰一人、彼女を責められる者はいない。
「ごめんなさい、本当にごめんなさい…!許してください。せめて家族だけは助けてください…!家族は何も悪くない。悪いのは私だけなんです。だから…」
「…顔を上げろ、アナベル」
大人気もなく、アナベルを責め立てた自分が情けない。
そんな事情があったとは、知らなかった。
「…うぅ…」
アナベルは、涙でくしゃくしゃになった顔を上げた。


