神殺しのクロノスタシス3

…数時間後。

聖魔騎士団隊舎の会議室に、そうそうたるメンバーが集まっていた。

俺は勿論、魔導部隊隊長であるシュニィ、果ては聖魔騎士団団長であるアトラスも。

任務のはずのキュレムと、結局見つけたらしいルイーシュも。

それに、他の魔導部隊の大隊長達も。

それだけではなく、イーニシュフェルト魔導学院にも連絡し。

シルナ・エインリーと、羽久・グラスフィアまでもが、駆けつけてくれた。

全員が集まって、そして全員が深刻そうな顔で、事態を重く受け止めていた。

ベリクリーデが、いなくなったから。

彼女がいなくなったから。それだけの為に、これだけの人間が集まったのである。

これが他の人間なら、確かに大隊長の失踪はただ事ではないが。

これほどに、緊迫した状況には陥っていなかっただろう。

でも、今回姿を消したのは、ベリクリーデだ。

他ならぬ、ベリクリーデ・イシュテアである。

彼女がいなくなったとあれば、ただ事ではない。

何せ、彼女の中には。

羽久・グラスフィアの中にいる、邪神と対を成す。

聖なる神が、封じられているのだから。

もし、彼女の中に封印されている神が、何者かの手によって復活させられることがあれば。

大昔の神々の大戦争が、再び勃発しかねないのだ。

ベリクリーデには、それだけの可能性がある。

「学院長先生…。学院の方には、何か変わったことは?」

シュニィが、心配そうにシルナ・エインリーに尋ねた。

もし、ベリクリーデの失踪が、神々の諍いに巻き込まれているのなら。

遅かれ早かれ、もう一人の神。

邪神を宿す、羽久・グラスフィアにも行き着くだろうから。

しかし。

「いや…今のところ、学院には何もないね」

「一応、シルナ分身と、ナジュやイレースが睨みを効かせてる」

とのこと。

今のところは、何もない。

だが、安心は出来ない。

聖なる神がもし復活し、暴れ出せば。

シルナ・エインリーも羽久・グラスフィアも、無関係ではいられない。

それどころか、もし聖戦が始まってしまえば、もう俺達だけの話では済まない。

世界中の人々だって、無関係ではいられなくなるのだ。

「…くそっ…」

俺は、自分の浅慮を恨まずにはいられなかった。

ベリクリーデが、自分から出ていったのだとしても、もし誰かに連れ去られたのだとしても。

いずれにして、ペアである俺が目を光らせて、注意しておけば、防げたはずだ。

俺が昨日、あんな下らないことで腹を立てていなければ…。

「…ジュリスさん、気持ちは分かります。でも、こんなときだからこそ…焦ってはいけませんよ」

シュニィが、俺の気持ちを察したように言った。

「そうだよ。まだベリクリーデちゃんが攫われたと決まった訳じゃない」

シルナ・エインリーまでも、そう言って俺を励ました。

…本当、らしくないよな。俺。

そうだ。落ち着け、クールになれ。

緊急時に焦って急いて、良いことなんて何もないと言ったのは、他でもない自分じゃないか。

…ふぅ。

一度、頭をクールにして。

俺は、シルナ・エインリーに尋ねた。

「ベリクリーデが連れ去られたとして、一番考えられる戦犯は…やっぱり、あのヴァルシーナって女か?」

「…そうだね」

…やはりか。