神殺しのクロノスタシス3

「そういう訳じゃねぇよ…。ただ、昨日も少し揉めたもんだから…」

「あー、まぁベリクリーデも、相棒になった奴は苦労するタイプだよなー。天然だし」

分かってくれるか。

この俺の気持ちが。

「ルイーシュも大概だけどな」

だな。

少なくともベリクリーデは、脱走はしないし、言うこと聞けと言えば、大抵の言うことは聞く。

むしろ、素直に言うこと聞き過ぎて困ってる。

比喩ってものが通じないからな、あいつには。

ついでに言うと、加減というものも知らない。

「でもなー、うん。相棒なんてやめてやる!と思ったことは…ぶっちゃけ、ある」

あるのかよ。

そこは、嘘でもないと言って欲しかったな。

そうだな。キュレムも人間だもんな。

畜生、もうやってられるか!と思うときだってある。

俺だって、長い年月生きてきて。

そう思った瞬間が、何度あったことか。

あのシルナ・エインリーでさえ、もうやってられるか!で、自分の使命を放棄したんだもんな。

誰だって、そう思うときがあるのは当たり前だ。

「でも、無理なんだよ」

「…無理?」

「そ、無理」

それは…。

「シュニィに頼んでも、ペアを解消してもらえないからか?」

「そういう意味じゃないよ」

職務上、二人のペアを解消しない方が良いから、ではなく。

「何て言うかさ…相棒って、家族と一緒なんだよ」

「家族…」

俺にはもう、とっくに家族はいない。

記憶にも、ほとんど残ってないが。

「どんなに嫌いでも、この野郎!って思っても、家族は家族だろ?家族やめろって言われても、それは出来ない話だろ?」

「…確かにな」

どんなに望まなくても、血の繋がりがある限り、家族である事実には変わりはない。

「まぁ、絶縁や勘当はあるし、実際俺も、実家からは絶縁されてるけども…」

そうなのか。

それは切ないな。

「…それでも、いや…だからこそ、ルイーシュは家族だし、どんなに怠惰で、どーしようもない奴でも…それでもあいつ、俺の家族みたいなもんだからさ」

「…」

「この野郎!って思った日の翌日には、もうこうして探し回ってるし。もう顔も見たくねぇ!って思った数時間後には、結局また一緒に喋ってるし。そういうもんじゃね?相棒って」

…そうだな。

実際俺も、同じことしてるな。

この野郎!って八つ当たりして、数時間後にはそのことを後悔して。

翌日になったら、こうして会いに行こうとしている。

「切っても切れない、ってことか」

「全くだ。切っても切っても情が生えてくる。お陰で今日も、元気にルイーシュ探しだぜ畜生!何処行きやがったあいつ!」

…お疲れ様。

「そんじゃジュリス、俺もう行くよ」

「あぁ。…早く見つかると良いな」

「本当だよ。切実にそう祈っててくれ!」

任務時間までに、キュレムがルイーシュを見つけられることを祈りつつ。

俺は、ゆっくりと女性用隊舎へと足を向けた。

切っても切れない、家族みたいなもん…か。

良いことを聞いた気がするよ。

ベリクリーデが、俺をそう思ってるかは別の話だがな。

いずれ俺達も、キュレムとルイーシュのような関係になるのだろうか?

…それはそれで、怖い気がしなくもないが。

少なくとも、ベリクリーデは脱走はしないので。

そこは安心、だと思った。






…の、だが。