神殺しのクロノスタシス3

人力車に揺られ、およそ二時間。

あまりにも急なでこぼこ道で、揺れる揺れる。

私は別に、何かのアトラクションみたいで、楽しかったけど。

汗をかき、わらじを履いた足を踏ん張って、人力車を引っ張っている二人の男の人が可哀想で。

何度も、「私自分で歩くよ」と言ったのだが。

その度に「なんと慈悲深い生き神様」とか、「御御足を汚す訳にはいきません」とか、よく分からないことを言われ。

結局、二時間ずーっと、獣道の中を人力車で運ばれて。

着いた先には。

「さぁ、生き神様。ここがあなたの居場所、桔梗谷でございます」

鬱蒼とした雑木林が一転。

開かれた平地が、目に飛び込んできた。

深い森の奥を、ここだけ開墾したみたいだ。

実際、この土地を開墾したのだろう。

辺りには畑や田んぼが広がり、植物が植えられていた。

更には、田畑に混じって、ポツポツと家…っぽいものが建っている。

家と言うか、掘っ立て小屋みたいなものだ。

収容所にいた頃、あんな小屋に住んでた。

すると。

その小さな掘っ立て小屋の数々から、一人二人と人が出てきて。

わらわらと、村人(?)達が集まってきて。

「おぉ…!本当に生き神様が…!」

「これでこの谷は安泰だ…!」

「伝承通りのお姿だ。なんと麗しい…!」

「ありがたや、ありがたや…」

「谷の守り神様が、とうとうお帰りなさった!」

村人達が、次々と人力車の前にやってきては、ひれ伏し。

泣き出さんばかりに、口々にそう言った。

お年寄りの中には、本当に涙を流している者さえいる。

子供達でさえ、大人に習い、私の前に、ひれ伏している。

…。

…?

私、女王陛下の特命を受けて、トラーチェまで来たのに。

これは一体、どういうことなんだろう?